平野綾が語る『ベルサイユのばら』への愛と見どころ マリー・アントワネットを演じる上でのこだわりも

声優

1

――アントワネットを演じるにあたって、どのようなことを意識されましたか?

「原作の膨大な内容を映画1本にまとめるというのは、とても大変な作業だったと思います。やはり、泣く泣く削られた大きなエピソードもたくさんあって、それらが凝縮された形でこの映画の尺に収まっているんです。なので、シーンからシーンだけでなく、セリフとセリフの間でも何年か経過していたりして。私は沢城さんと二人で収録させていただいたのですが、年表やエピソードを確認しながら、一つ一つのシーンを作っていきました。シーンからシーンへ移る時に、声の印象がだいぶ違っているかもしれませんが、その間の空白の何年間に、歴史を揺るがすような大事件が起こったり、彼女の成長を促す大きな出来事がたくさんあったのだと感じていただけるように、説得力のある芝居になるよう心がけました」

――前半と後半で平野さんの声色もガラッと変化していますよね

「技術的な面で言うと、最初の頃は、まだ子どもで体が成熟していないので、肺活量なども子どもらしい範囲でお芝居をすることを意識しました。息が上がる時や何かに気づいて『ハッ』とする瞬間などは、子どもらしい息の吸い方や呼吸を心がけました。一方で、物語の後半になると、年齢も体も成長して、責任感を持ちながら地に足をつけて生きる女性へと変わっていく姿を表現する必要があって。声の出し方も、足の裏から木の根っこが生えていくような感覚で、どっしりとした存在感を持たせたいと考えていました。そうした成長の過程に合わせて、声のトーンや息遣い、感情の伝え方などを大きく変化させながら演じました」

――でも、どこか大人のアントワネットにも少女のような雰囲気があるように感じました

「そこが非常に絶妙で難しい部分でもありました。アントワネットにはどこか少女性を残したまま大人になっている一面があると思っていて。なので、全体的に重くしすぎるのではなく、ポイントごとに『昔のアントワネットだ』と感じられる部分を意識しました。彼女の成長過程を感じてもらえたら嬉しいです」

――今回は沢城さんともアフレコ現場で一緒というお話もありましたが、沢城さんとのシーンで印象に残っている演技はありますか?

「『同じ女性であるあなたにも、分かってはもらえないのですね』とアントワネットが思いを伝える場面での芝居です。あの場面でオスカルは、自分の存在意義を問われる程の大きな衝撃を受け、『女としてどう生きるか?』ではなく『人としてどう生きるか?』に辿り着き、自分の人生を歴史に捧げ、戦いの道を選んでいく。あのシーンでの葛藤が2人の行く末に繋がるため、沢城さんと何度もテイクを重ねながら、細部までこだわって作り上げていきました」

――そして本作は15曲の挿入歌が随所で流れていて、歌唱シーンも楽しめる映画になっています

「まずはアフレコより先に楽曲のレコーディングが始まったため、全体の曲数を聞いて驚きました。この作品は音楽劇の作り方だなと思います。アントワネットの曲は、彼女のさまざまな年代を切り取ったものが多いので、全体を通して統一感を意識しながら、アントワネットが人生を振り返った時に『この瞬間にこんな出来事があったな』と思い出しながら歌っているような感覚で取り組みました」

――ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン役の加藤(和樹)さんとのデュエットも印象的でした

「加藤さんとは、私が帝国劇場で初めて主演を務めさせていただいたミュージカル『レディ・ベス』という作品で、相手役としてご一緒させていただいた経験があったんです。お互いの演技や歌のアプローチに関して『きっとこういう風に来るだろうな』と自然と想像がつく部分があって、安心感と信頼を感じながら臨むことができました」

――改めて『ベルサイユのばら』が令和の時代に劇場アニメ化することへの意義を感じます

「そう思います。コロナ禍を経て、人とどう関わっていくかという感覚が大きく変わったと思うんです。恋愛だけでなく、友情であったり、社会における人間関係において、距離感が曖昧になったじゃないですか。そして今、それを再構築しようとしている最中に、こういった作品が登場することで、これまで自分たちが感じていたことや考えていたことを後押しするきっかけになるんじゃないかと思います。長年のファンの方々にとっても、初めて読んだ時の感覚と今では時代の流れも影響し、だいぶ違いがあるかもしれません。作品を通じてその当時を思い起こしながら、今を考えるきっかけにもなるかもしれませんね」

――『ベルサイユのばら』をこの映画で知る10代や20代の方がこの作品をどう受け止めるのか楽しみです

「歴史物というと、少しハードルが高いと感じる方もいるかもしれませんが、この作品は、実際に起こった出来事に華やかな登場人物たちが加わることで、親しみやすくなっていると思います。ファッションもすごく注目ポイントだと思うので、若い世代の方にも響く部分が多いはず。『ベルサイユのばら』の楽しみ方が広がったら嬉しいです!」

劇場アニメ『ベルサイユのばら』でオスカルを演じた沢城みゆきにインタビューした記事はこちら

取材・文=川崎龍也 撮影=内田大介

この記事の全ての画像を見る
  1. 1
  2. 2
  1. 1
  2. 2

映画情報

劇場アニメ『ベルサイユのばら』
2025年1月31日(金) 全国ロードショー

詳しくは
こちら

Person

関連人物