柚香光星風まどかの花組トップコンビがお届けする忠臣蔵ファンタジー、「元禄バロックロック」

柚香光
柚香光

花組公演「元禄バロックロック」。この作品は「忠臣蔵ファンタジー」と銘打たれている。「忠臣蔵」は、赤穂の四十七士が、無念の死を遂げた主君・浅野内匠頭の仇をとるべく、吉良上野介の館に討ち入るという、史実の「赤穂事件」を元にした物語である。

星風まどか
星風まどか

©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

タカラヅカで「忠臣蔵」といえば、1992年、建て替え前の旧・宝塚大劇場で最後に上演された「忠臣蔵 〜花に散り雪に散り〜」が知られている。この作品で退団した雪組トップスター・杜けあき演じる大石内蔵助の「もはやこれで、思い残すことはござらん」という名台詞が印象に残る作品だ。

「忠臣蔵 〜花に散り雪に散り〜」は「タカラヅカ版『忠臣蔵』の集大成」と称された作品だった。だが、「元禄バロックロック」は、この「忠臣蔵」の世界に、「時」とどう向き合うかという、もう1つのテーマが重ねられている。果たして、令和版「忠臣蔵」ともいえる「元禄バロックロック」はいったいどのような結末を迎えるのだろう?

物語の主人公は、元・赤穂藩士のクロノスケ(柚香光)。「時」をほんの少しだけ戻せる時計を発明したクロノスケは、仇討ちの志もすっかり忘れ、賭場「ラッキーこいこい」を仕切る不思議な少女キラ(星風まどか)にぞっこんである。だが、はじめは「時」に翻弄されていたクロノスケもキラも、物語が進むにつれて大きく変わっていく。

クロノスケを演じる柚香光は、2020年「はいからさんが通る」で花組トップスターに就任した。端正な容貌と、確かな演技力を併せ持つスターで、2023年の幕開けには悲恋物の名作「うたかたの恋」で皇太子ルドルフ役に挑む。「元禄バロックロック」のクロノスケ役でも、その現代的な持ち味で「忠臣蔵」の世界に新しい風を吹き込んだ。

キラを演じる星風まどかは、2017年に宙組トップ娘役に就任した後、花組に組替えとなり、この「元禄バロックロック」が大劇場での柚香との新トップコンビお披露目となった。共に充実期を迎える2人が見せる息の合った芝居も、この作品の見どころだ。

吉良上野介にあたるコウズケノスケ(水美舞斗)は、「時」さえ思うままにして天下を我がものにしようとする野心的な男として描かれる。対するクラノスケ(永久輝せあ)は、「忠臣蔵」の大石内蔵助のイメージを踏襲しつつ、等身大な人間らしい煩悶も垣間見える。

水美舞斗
水美舞斗

©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

浅野内匠頭にあたるタクミノカミ(聖乃あすか)には天才的な時計の研究者であったという設定が加わった。幻想的な雰囲気で現世を漂い続ける姿は、「時」をテーマにするこの作品の象徴だ。

「忠臣蔵」でおなじみの人物に加え、歴史上の人物を彷彿とさせるキャラクターも登場する。時局を冷静に見据えるヨシヤス(優波慧)は柳沢吉保がモデルだろう。そして、犬公方として知られる徳川綱吉が、何と少年将軍ツナヨシ(音くり寿)として登場し、大活躍する。

幕開き、舞台上で動く幾つもの時計に目を奪われる。衣装も斬新なデザインで、カラフルな色使いが楽しい。スタイリッシュな今の花組らしい、「忠臣蔵」のパラレルワールドを展開。
 
もちろん「忠臣蔵」と聞いて期待してしまうシーンも盛り込まれている。赤穂浪士たちが銀橋にずらりと並ぶ姿は壮観だ。ここには花組期待の若手男役たちが顔をそろえる。「今」この一瞬のかけがえのなさ、そして、「今」を生きることの大切さ。令和の「忠臣蔵」で力強く打ち出されるメッセージを改めて感じてみたい。

文=中本千晶

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放送情報

元禄バロックロック('22年花組・東京・千秋楽)
放送日時:2023年1月1日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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