若き日の竹野内豊が引き締まった肉体を惜しみなく披露、現在とは違った魅力を発揮した映画「冷静と情熱のあいだ」

1994年に俳優デビューして以来、ドラマに映画にCMにと活躍を続ける竹野内豊。1997年の月9ドラマ「ビーチボーイズ」での爽やかな美男子のイメージも根強い。近年では、「連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」」(2021年)での圧巻の演技も強い印象を残した。その一方で、自由奔放なクセ者裁判官を演じた「イチケイのカラス」(2021年)やタクシーアプリのCMでコミカルな姿も披露。2023年には映画「イチケイのカラス」や山田孝之とのW主演作「唄う六人の女」の公開も控える。年齢を重ねて渋みと色気も増し、人気と実力を兼ね備えた人気俳優としての地位を確立している。

そんな竹野内が映画初出演で初主演を務めた若き日の作品が、「冷静と情熱のあいだ」(2001年)だ。人気作家の辻仁成と江國香織が1つの恋愛を男女それぞれの視点から描いた共作ベストセラーを映画化した本作は、12月16日(金) から全国公開した16年ぶりの劇場版も話題を集める「Dr.コトー診療所」シリーズ(2003年)の中江功が監督を務めた。

フィレンツェで美術絵画の修復士を志す阿形順正は、修行の末に才能を開花させようとしていた。活発で少し気の強い恋人・芽実もいて、順調な人生を送っている。しかし、かつて愛した女性・あおいの存在をどうしても忘れられず、心には空虚な穴が空いていた。ある時、順正は彼女がミラノにいることを知り、意を決して会いに行くが、あおいは裕福な実業家の恋人と何不自由のない生活を送っていた。追い討ちをかけるように工房で事件が起き、失意の中で帰国。そして、2人が別れることになった出来事の裏に隠されていた真実を知る。

「星の金貨」(1995年)や「ビーチボーイズ」をはじめとするヒットドラマに次々と出演し、人気俳優となっていた竹野内。本作では、1人の女性を一途に想い続けるストイックでナイーブな青年・順正を等身大に演じ、第25回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を初受賞した。

絵画と向き合う真剣な横顔が美しい。芸術家らしい繊細な内面や心に秘めた熱が、静かに伝わってくる。引き締まった肉体美も惜しみなく披露。今と変わらぬ美声ながら、まだ若く荒削りな演技が今とはまた違う魅力を放つ。恋人だった頃の情熱的な視線も、かつての恋人に向ける瞳も切なく哀しく映る。恩師への複雑な心情や激しい怒り、絶望に打ちひしがれる姿。1人の青年の中に渦巻く様々な感情を懸命に演じきった。 2人の間の愛を真っ直ぐに信じた、ピュアな笑顔が眩しい。

また、「インファナル・アフェア」(2002年)で知られるケリー・チャンがヒロインを務め、 2人の共演も当時話題を呼んだ。順正の友人役にユースケ・サンタマリア、恋人・芽実役に篠原涼子も出演。今やベテラン俳優となった彼らの、気鋭の若手時代も楽しめる。現地ロケによるフィレンツェやミラノの美しい街並み、エンヤの透き通るような歌声も作品の世界観にマッチする。映画初主演を務めた竹野内をはじめとするキャストらの好演が、珠玉のラブストーリーを生んだ。

文=中川菜都美

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放送情報

冷静と情熱のあいだ
放送日時:2023年1月13日(金)13:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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