「VIVANT」にも通じる堺雅人の豹変...内なる憤怒を表現した「クライマーズ・ハイ」の名場面

「クライマーズ・ハイ」
「クライマーズ・ハイ」

(C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

悠木は、組織とは一歩引いた関わり方をした自由気ままな遊軍記者だが、いざ事件を担当すると熱くなっていく実直な気質。時には周囲とぶつかり合いながらも、最善の記事を世に送り出すべく抜群のリーダーシップを発揮する。そして、そんな悠木のことを慕っているのが堺演じる社会部の記者・佐山だ。

この佐山も、悠木同様、どこか掴みどころのない雰囲気を放っているが、誰よりも早く現場に出向こうとするなど、仕事に対しては真っ直ぐな熱血漢。一見穏やかでスマートな自身のイメージを裏切る役柄も堺は見事にものにしており、未曾有の大惨事が目の前に広がる山中の墜落現場を駆けずり回る泥臭い姿は新鮮だ。

「クライマーズ・ハイ」
「クライマーズ・ハイ」

(C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

中でも秀逸なのが、"現場に直面した人間でなければ書けない生原稿"が社内の判断で見送られた際、悠木に詰め寄る佐山との対峙シーン。内なる憤怒を表現した、冷たく鋭い視線と口調は鬼気迫るものがある。悠木の無茶振りとも言える要望に対し、怒号を浴びせ、半ばやけになったかと思えば、筆を走らせ冷静になったり...。凄まじい集中力から繰り出されるテンションの高い演技からは、「VIVANT」をはじめとする、後の堺の代表作とも相通じるものが感じられるだろう。

「クライマーズ・ハイ」
「クライマーズ・ハイ」

(C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

堤や堺の他にも、尾野真千子、遠藤憲一、田口トモロヲ、でんでん、山崎努(※「崎」は正しくは「立さき」)といった実力者が名を連ねている本作。その中でも滝藤賢一は、佐山と共に事故現場に出向くとあまりに悲惨な状況に精神錯乱状態になった記者の神沢を熱演。尋常ならざる様子で、声を震わせながら現場の状況を口にする様子はリアルな狂気を感じさせる。

事故発生から38年が経つ今も、日本中の記憶に刻まれている未曽有の大惨事。そのセンシティブな題材を扱うことに対しての覚悟――作り手の情熱はもちろんだが、堤や堺ら、キャスト陣の重厚な演技からも、そうした日本映画の「本気」を感じることができるはずだ。

文=HOMINIS編集部

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放送情報

クライマーズ・ハイ
放送日時:2023年9月4日(月)21:00~、10月22日(日)18:25~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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