瀬戸康史らが体現する「すれ違い」が愛おしい！城定秀夫監督×今泉力哉脚本による意欲作「愛なのに」

三谷幸喜の傑作二人芝居「笑の大学」が四半世紀ぶりに復活し、内野聖陽が演じる検閲官に相対する座付き作家役に抜擢された瀬戸康史。2005年の俳優デビュー後、ミュージカル「テニスの王子様」(2006年)や「仮面ライダーキバ」(2008年)などでイケメン俳優として注目を集めた瀬戸。甘い顔立ちを生かした愛らしいキャラクターや爽やかな役どころが多かったが、月9ドラマ「海月姫」(2018年)では美しい女装男子を演じ、連統テレビ小説「まんぷく」(2018年)ではヒロイン夫婦を支える愛嬌溢れる男を好演。近年では、人気ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(2020年)や大ヒット映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」(2022年)などにも出演し、キャリアを重ねて幅広い役柄を演じている。

役者として常に成長し、魅力的な変化を続ける瀬戸。2022年の主演映画「愛なのに」も、これまでの出演作とは一味違う意欲的な作品となった。古書店の店主や店に通う女子高生らが、一途な片想いの恋心を募らせていく様を描いた本作。「アルプススタンドのはしの方」(2020年)の城定秀夫監督と「愛がなんだ」(2018年)の今泉力哉監督が、互いに脚本を提供してR15+のラブストーリーを競作する、異色のコラボレーション企画「L／R15」の1本だ。今泉の脚本をもとに城定が監督を務めた本作で、瀬戸が新たな一面を見せた。

古本屋を営む多田は、ある日、女子高生が目の前で万引きをして店から逃走し、後を追いかけて捕まえる。しかし、ずっと店に通っていて名前を覚えてほしくて盗んだと打ち明けられたうえ、唐突に求婚され困惑するが、多田は昔のバイト仲間・一花のことが忘れられないでいた。一方、結婚式の準備に追われる一花は、婚約者の亮介がウェディングプランナーと肉体関係にあることを知らずにいた。

瀬戸は古本屋店主・多田を演じた。憧れの女性を忘れられないという切ない想いを抱えている多田。求婚してきた女子高生・岬の若さゆえの真っ直ぐさにたじろぎ、片想いしている一花が結婚すると聞いて動揺を隠せない。岬に片想いする男子高校生に殴られたり、婚約者の裏切りを許せない一花から浮気相手になるよう頼まれたり、岬の親に罵倒されたりと厄介ごとに巻き込まれていく...。冴えない雰囲気と憂いを漂わせ、爽やかな好青年にはとても見えない。真面目に生きているはずなのに理不尽な目にばかりあう多田は、これまでの瀬戸にはあまりない役どころだ。

この記事の全ての画像を見る