乃木坂46・久保史緒里がアイドル衣装を脱ぎ捨てて表現した"女の情念"から感じる、底の見えない演技力の深さにゾクリ

さまざまな個性で彩られたメンバーからなる乃木坂46。3期以降のメンバーのみとなった2023年のツアーも大成功させ、見事に世代交代を成し遂げたことを体現してみせた。それは、卒業した先輩たちに勝るとも劣らない個性的なメンバーが集結しているからに他ならないだろう。そんな個性豊かなメンバーの中でも、1、2を争うメンバーが久保史緒里だ。

久保といえば、32ndシングル「人は夢を二度見る」で山下美月とWセンターを務めるなど、グループには欠かせない中心メンバーとして他のメンバーを引っ張っているだけでなく、歌唱力にも定評があり、2017年から女性ファション誌の専属モデルとして活躍する顔も持っている。また、トーク力も抜群で、2022年からは「乃木坂46のオールナイトニッポン」の2代目パーソナリティーを務めているほど。そして、女優としても引っ張りだこで、歌唱力を生かしたミュージカルから舞台、テレビドラマ、映画、大河ドラマに至るまで、幅広い活躍を見せている。

そんな"何でもできる"久保だが、しっかりそれぞれの能力が高いところが魅力で、グループ活動ではアイドルの一員として光り輝きながら、グループを離れた個人の仕事でも期待以上のパフォーマンスを見せ、観る者を虜にしている。中でも女優業に関しては舞台、映画、ドラマ、ミュージカルと場所を選ばない活躍ぶりで、それだけで演技力の高さがうかがえるのだが、特にその演技力を堪能できる作品の1つが2023年の映画「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」だ。

同作品は、伊藤沙莉演じる小さなバーのバーテンダー兼探偵の女性・マリコがさまざまな依頼に奮闘する姿を描いたもので、6つのストーリーを2人の監督が分業して1本の映画として作り上げているという異色作。久保はバーの常連客でホストに恋しているキャバ嬢・絢香を演じている。

乃木坂46のセンターを務めるほどの透明感あふれる久保が、ホストにガチ恋をしているキャバ嬢という、自身とは真逆の役どころをどう演じるのか。「さすがにギャップがあり過ぎて違和感があるのでは?」と思う者も少なくないと思うのだが、そんな心配は始まった時点で杞憂に終わる。ファーストカットがバーのカウンターで管を巻いているのだが、よく見ないと久保だと分からないほど自然に演じている。加えて、思いを寄せるホストとの思うようにいかない恋に踊らされ、傷つき落ちていく女性を熱演。愛する人の心が手に入らず思い詰めていき、顔はやつれ、精神的に病んでいくのだが、そこにはキラキラした衣装をまとったアイドルの姿はなく、"女の情念"に取り憑かれた1人の女性でしかない。そう見えるのは、久保が"女の情念"の恐ろしさや闇深さだけでなくピュアな部分までもしっかり演じているからこそ、それが絢香の人間味という形で表現され、観る者にストレートに届くのだ。

何よりもこの"女の情念"を他の作品でも表現することができていることがすごい。監督や脚本、共演者から受ける刺激といった"その現場だけが持つもの"による偶発的なものではなく、しっかりと自分の引き出しの中から出しているからだ。
振り返れば、「パルコ・プロデュース2022 舞台『桜文』」では、全く笑わない吉原随一の花魁役で、自我を失うほどの絶望的な経験と悲恋を体験した過去を演じながら"女の情念"を表現した。大河ドラマ「どうする家康」でも、家康の嫡男・信康の元に嫁ぎながら父親の信長から受けた密命を果たすために暗躍する五徳を演じながら、織田家の娘という矜持と気の強さ、気高さからくる"女の情念"を表現。その引き出しの多さと奥深さに、「20歳そこそこの年齢で、どうすればそこまで"女の情念"を理解し、観る者の心を揺さぶるほど表現できる域にまで達することができるのだろう」と、思わずその底の見えない演技力の深さに背筋が凍るほど。

アイドル、モデル、歌い手、パーソナリティー、女優と何でもできる久保の能力の中でも、今後さらに新しいステージを見せてくれるであろう女優業を支える圧倒的な演技力を、久保が表現する"女の情念"から感じてみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

探偵マリコの生涯で一番悲惨な日

放送日時:2024年1月21(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2024年1月25日(木)0:50~
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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