――杉田監督の演出については、いかがでしたか?
千之助「監督はもう、本当にお元気でいつもフルパワーなんです(笑)。監督自身が現場を引っ張り、皆がやっと付いていく感じ。あの太陽のような笑顔で『やるぞ~!』と鼓舞するというタイプで...(笑)。杉田監督の現場のあの空気感に触れさせてもらったことはかけがえのない経験であり、本当に大きな宝になりました」
望海「監督の独特な表現で、『息が流れるようにやって』と何度か言われたんです。自然な空気の流れを止めないように芝居をするという意味で捉えていましたけど、そうすることで見ている人が登場人物をリアルに感じられるのかなと。監督がそこをすごく大事にしているんだと実感しました。とにかく、ひとつの画、ひとつの言葉に対してものすごくこだわりを持っていらして。監督のそのすごい熱意に対し、こちらが負けて折れてしまったらいけないという思いでやっていました」
――お二人が今回演じた幸助、おきぬというそれぞれの人物像については、どう捉えていましたか。
千之助「幸助は非常にシンプルな人。純粋で熱く、ある意味憧れる部分もあります。雑念にとらわれながらも芯が太い。成長したらすごくいい男になるんじゃないかな(笑)。やっぱり、藤沢先生の作品は登場人物に共感しやすい。劇中で彼は最後に大きな決断をするのですが、絶対に後悔はしないはず。僕もそんなふうに生きていきたいと思いますね」
望海「最初に台本を読んだ時、おきぬは『嫌な人だな』と思ってしまったんです。だから共感できなかったのですが、演じるうちにとてもチャーミングな人だと思うようになりました。過去にいろいろあったけれど、おきぬもきっと彼女なりに幸せになりたかったんだなと...。寂しさと人恋しさを抱えながら生きていて、幸助に心の隙間を埋めてもらいたかったんだろうなと想像すると、だんだん憎めない存在になっていきましたね」
――この作品に参加して良かったと思える、何か今後の糧になるものは得られましたか。
千之助「まずは時代劇の制作現場を知ることができたこと。そして、人の心を真っすぐ演じることの大切さをかみしめられたことです。さらに撮影を通じて、いろいろな意味での忍耐力が身に付いたかなと思います」
望海「監督をはじめ、作り手の皆さんの情熱を間近に感じられ、そこに参加できて良かったと心から思います。すごく丁寧に時間をかけて大切に作っている現場でしたから。こんなにこだわっていることが分かると、これから他の時代劇を見るときの気構えも変わりますね」
千之助「時代劇は歌舞伎ともリンクしますし、日本の文化だと思います。それが衰退してしまうのは悲しいことですから、この作品をきっかけにより多くの人に時代劇の良さを知ってほしいと思います」
かたおか・せんのすけ●2000年3月1日生まれ、東京都出身。片岡孝太郎の長男で、祖父は十五代目片岡仁左衛門。2004年、歌舞伎座にて4歳で初舞台を踏む。歌舞伎の他、映画「メンドウな人々」(2023年)など映像作品でも活躍。
のぞみ・ふうと●1983年10月19日生まれ、神奈川県出身。2003年に宝塚歌劇団に入団し、2017年に雪組トップスターに就任。2021年の退団後はミュージカルを中心に活躍し、第30回読売演劇大賞 優秀女優賞や第48回菊田一夫演劇賞などに輝く。
撮影=島本絵梨佳 取材・文=渡辺敏樹
スタイリング=菊池志真(望海風斗)
ヘアメーク=Eita(片岡千之助)、chie(KIND)(望海風斗)
放送情報【スカパー!】
橋ものがたり「約束」
放送日時:2024年2月3日(土)19:00~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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