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そこからは、じわじわと最上は自分が目を掛けていた後輩に追い詰められていく。自ら後輩たちに「絶対にやってはいけない」と説いてきたことに向かっていく。これまで正義のヒーローを演じることが多かった木村が、どんどんと深みにはまり、ダークサイドに進んでいってしまう姿は非常に新鮮だ。
一方、二宮も沖野の変化を見事に体現している。最初は最上に評価されたいという思いから、被疑者を執拗に取り調べる。その相手が闇社会のブローカーを務める諏訪部や、老夫婦殺害の容疑をかけられた松倉だ。諏訪部は松重豊が、松倉は酒向芳が務めた。
松重、酒向ともに、まさに怪演と言ってもいいほどの存在感で二宮の前に立ちはだかるが「できる検事」を最上に提示したい沖野はひるまない。冷静かつ高い知性でスマートに追い込む一方で、感情を剥き出しにして恫喝まがいに取り調べる緩急をうまく表現した二宮の密室での芝居は脱帽だ。
そんな最上に心酔した前半から、後半は尊敬しているからこそ最上の教えを守ろうと彼を追い込む立場へと変貌する。攻めに転じる沖野、それを力でねじ伏せようとする最上。公開当時、物語の結末にはさまざまな意見があったが、最上、沖野が互いに思う正義のぶつかり合いは見ごたえ十分だ。
主演の木村、二宮和や前述した松重、酒向のほか、物語のカギを握る橘沙穂役の吉高由里子、事件の容疑者・弓岡を演じた大倉孝二など、二人の脇を固める俳優たちの演技にも注目だ。
文=磯部正和
放送情報【スカパー!】
検察側の罪人
放送日時:6月15日(土)15:35~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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