生涯を芝居に捧げ、「現場者」であり続けた名優・大杉漣

「天の茶助」
「天の茶助」

2018年2月21日。名優・大杉漣の突然の訃報は多くの人を驚かせ、同時に悲しみに包み込んだ。

俳優という仕事をこよなく愛し、"現場者(げんばもん)"を自認していた大杉は、メジャー、インディーズ、果ては学生映画まで、自分が面白いと思った作品には役の大小にかかわらず出演してきた。それ故に現場で年間三百数十日以上過ごすこともざらで、多い時には1日に3つの現場を掛け持ちしたことも。そのときは朝が理事長、昼はヤクザ、そして夜は変質者というあまりにもベクトルの違う3つの役を演じ分けたというから、まさに"現場者"の面目躍如であろう。あまりにも多くの作品で大杉を目にした海外の記者からは「いったいレン・オオスギは何人いるんだ!」と驚きの声が寄せられたこともあったほどだという。

セリフを排した沈黙劇で知られる太田省吾主宰の劇団・転形劇場に所属していた大杉は、1978年に高橋伴明監督のピンク映画『緊縛いけにえ』で映画デビュー。現場でスタッフ全員が一丸となってもの作りに打ち込む姿にすっかり魅了され、舞台の合間に映像作品に出演。1988年の劇団解散後は、映像中心に活動するようになる。

「ソナチネ」

(C)1993 松竹株式会社

そんな彼の転機は40歳の時に訪れた。試験を受けているようだから、という理由でこれまでオーディションを避けてきた彼の元に、ある1本のオーディションの話が舞い込んでくる。それが北野武監督の『ソナチネ』だった。しかし、オーディションは、大杉が開始時間を勘違いしていたため、会場に入ったときにはすでに終了。帰ろうとしていた北野監督とは一瞬チラッと目が合っただけで、何もできないまま終わってしまった。これはもうダメだと思っていた大杉だったが不思議なことに合格。本作で演じた片桐というヤクザは、普段は無表情で静かなたたずまいでありながらも、ギアが入ると一気に狂気が爆発。まさに「静」と「動」とが混在するコントラストの強い芝居は、北野映画を体現する存在として観客に強い印象を残した。

その後も"現場者"は数多くの映画・ドラマに出演してきた。SABU監督の『POSTMAN BLUES ポストマン・ブルース』に登場する殺し屋ジョーは、殺しに美学を求めるハードボイルドな男で、彼にとっても大切な役になったと語っている。それからも彼はSABU監督の作品にいくつも出演。『天の茶助』では、地上に降りてきた天使(松山ケンイチ)を助ける骨董(こっとう)品屋の店主・種田を好演。ひょうひょうとした愛すべきキャラクターで、ファンタジックな映画を彩った。

映画もドラマも関係なく、時にはバラエティ番組にも出演する。2001年に発表した自伝本「現場者 300の顔をもつ男」の中で彼は、「求められればどこにだって出掛ける」と、その俳優哲学を語っている。ドラマでも「相棒」「僕の生きる道」「湯けむりスナイパー 」「熱血刑事・吉永誠一 絵が殺した」「刑事 吉永誠一 涙の事件簿」「バイプレイヤーズ」など、幅広いジャンルの作品に出演。登場人物の父親、上司といった役どころが多く、お茶の間でもおなじみの顔だった。今はただ、彼が残した多くの作品を振り返りながら、故人をしのびたい。

※引用:大杉漣「現場者 300の顔をもつ男」(マガジンハウス、2001年)

文=壬生智裕

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熱血刑事・吉永誠一 絵が殺した

放送日時:2018年6月2日(土)21:00~


刑事 吉永誠一 涙の事件簿2 ~帰れない遺骨~

放送日時:2018年6月2日(土)22:50~

湯けむりスナイパー お正月2時間スペシャル

放送日時:2018年6月9日(土)21:00~


天の茶助

放送日時:2018年6月16日(土)21:00~


ソナチネ

放送日時:2018年6月23日(土)21:00~


HANA-BI

放送日時:2018年6月30日(土)21:00~

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