外的な要素だけでなく、内的な部分でも高杉晋作という幕末の志士を演じきった松平。やはり印象深いのは、涼やかながら鋭い眼光を放つ瞳と堂々たる風貌から醸し出されるカリスマ性だろう。そんな人の上に立つ者の風格を持ちながらも、奔放さが感じられ、それでいてどこか親しみやすいという重すぎない雰囲気が、時として「やんちゃキャラ」「愛されキャラ」と呼ばれる高杉晋作の人物像にぴったりとはまっている。
武力行使に走る同志をいさめる冷静さがありながら、最期は戦って美しく死にたいという武士の精神を持ち合わせているのも松平が演じる高杉の魅力だ。そして圧巻といえるのは、彼の豪胆さが如実に感じられるシーンだろう。中でも白眉なのは、歴史的にも奇跡の逆転劇として知られる「功山寺決起」の場面だ。まったく勝算がないにもかかわらず、たとえ一人でも戦うと言い放つ松平の鬼気迫る名演は必見だ。
■桂小五郎を演じる中村雅俊にも注目
本作は高杉晋作だけでなく、桂小五郎や久坂玄瑞といった長州藩の若者たちを生き生きと描いた青春群像劇としても楽しめる。中でも目を引くのは、桂小五郎役を演じた中村雅俊だ。彼は落ち着いた雰囲気と切れ者としての鋭さを共存させる演技で、無駄な戦いはせず攘夷のために策を講じる桂小五郎を好演。松平演じる高杉に比肩する存在感を見せた中村の姿にも注目だ。
文=元永真
放送情報【スカパー!】
奇兵隊 第一部 京洛の花に舞う ―決起の章―
放送日時:10月11日(金) 23:00~
奇兵隊 第二部 四境ことごとく敵 ―回天の章―
放送日時:10月12日(土) 23:30~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら