時代劇のトップスター・里見浩太朗の代表作に数えられる痛快時代劇「長七郎江戸日記」。身分のある者が庶民の中に身を隠して悪を成敗していくストーリー展開は「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」など時代劇における定番といえるが、本シリーズもそんな王道時代劇の1つだ。
主人公の速水長三郎は瓦版屋に下宿する一介の素浪人でありながら、その正体は3代将軍徳川家光の弟である駿河大納言忠長卿の遺児・松平長七郎長頼。自身が政治利用されることを避け、普段は瓦版作りを手伝いながら庶民として暮らしているが、江戸の町にはびこる不正を見つけるとそれが一変。葵の紋所の入った着物姿で現れて正体を明かすと、柳生新陰流免許皆伝の腕前で二刀流を駆使し首謀者たちをバッタバッタと斬り倒していく。
1983年から始まった第1シリーズを皮切りに1991年までに全3シリーズ、レギュラー回218話とスペシャル回15話が放送された大人気時代劇だけに、出演陣も豪華絢爛。里見をはじめ、野川由美子、下川辰平、火野正平ら名優たちが名を連ねている。なかでも、10月22日(火)に時代劇専門チャンネルで放送される「長七郎江戸日記スペシャル 天下を取れ!仕掛けられた反乱」では、ラストサムライこと藤岡弘、との共演が実現した。
■藤岡が演じる貴重な敵役
今作で藤岡が演じるのは、別木軍兵衛という世直しを夢見る浪人。長七郎とも自宅で一夜呑み明かすほど意気投合する別木だったが、水面下では自身を慕う浪人たちと決起して幕府転覆を画策。将軍法要のため増上寺を訪れる松平一門を爆薬で抹殺する計画を進めていたというのが物語のあらすじになる。
一見すると、藤岡には珍しい敵役かと思いがちだが、物語の冒頭で天神一家から暴行を受ける瓦版屋の住み込み従業員・友吉(宮川一朗太)の身代わりを買って出る男気にあふれた一面が描写されているように、根っからの悪人ではなく義憤に駆られた義賊であるという人物像が見て取れる。まさに筋の通った藤岡にぴったりの役どころなのだ。
そんな藤岡が見せる演技の中でも、格別なのが計画の中止を求める長七郎との間で問答を繰り広げるシーン。ここで見せる決意と覚悟を語る姿からは演技の枠を通り越した男の凄みを感じさせるが、これも熱い正義感を持つ藤岡ならではといえる。
他にも槍を使った殺陣など、随所に藤岡らしさが散りばめられた本作。ある意味では、里見が演じる長七郎よりも主人公らしい敵役である別木にも注目して楽しんでほしい作品だ。
文=安藤康之
放送情報【スカパー!】
長七郎江戸日記スペシャル 天下を取れ!仕掛けられた反乱
放送日時:10月22日(火) 23:00~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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