坂東龍汰×西野七瀬、『君の忘れ方』初共演で感じたお互いの魅力 作品との向き合い方も明かす

――本作でグリーフケアが描かれていますが、坂東さんは事前に知識を入れた上で役作りをされたのでしょうか?

坂東「事前に勉強することはしませんでした。というのも、昴と同じタイミングでグリーフケアを知って、彼が感じることをその場で感じられたらいいなと思ったんです。ただ、撮影が終わった後に、改めてグリーフケアというものについて考える機会があって。この経験を通して、今後自分が人生を歩む中で、同じような場面に出会った時にどう選択をするのか、その選択肢の一つとして確実に心に刻まれたと思います」

――坂東さんは「感情がコントロールできなくなった」とコメントされていましたが、昴という役とはどう向き合ったのでしょうか?

坂東「まず、撮影に入る前に、不安やプレッシャーを正直に監督に相談しました。僕は普段、客観的に物事を組み立てて作品に向き合うスタイルなんですが、今回はそのアプローチをやりすぎた結果、逆に怖くなってしまったんです。自分が経験していないことを演じるというのは、どうしても想像の世界が中心になってしまう。それが僕にはとても怖く感じられました。実際に見たり聞いたりしてリアルを掴みたいタイプなので、そういった状況が不安を引き起こしたんだと思います。そんな中で監督が『昴の主観に立って、撮影中に目の前で起きることを坂東くんなりに感じて表現してほしい』と言ってくださって、煮詰まっていた自分の肩の荷が下りたというか、すごく楽になりました」

――監督の言葉が背中を押してくれたと。

坂東「そうですね。ただ、昴の主観に完全に入り込んだことで、彼の混乱や感情に自分も引きずられてしまうことがあって。もちろんそれが正解ではあるんですが、自分の感情をコントロールできなくなる時があってすごく悩みました。でも、監督からは『映画を作るってそういうことだし、主演という立場ではそうなるのが自然。それを支えるために周りにはプロフェッショナルな大人たちがいるから、迷ったり混乱したりしてもいいんだよ』と言われて、僕も躊躇せずに向き合えました。実際、現場ではちょっと不安定な状態になっていたようなんですけど、それも含めて昴を生きるということだったんだろうなと思っています」

――昴と向き合う中で、ご自身の中の引き出しが増えた感覚なのでしょうか?

坂東「そう思います。本当に主演という立場でなければ経験できないことだなって。これまで助演として出演してきた時には、自分が主体になるというよりは、周りを見て、助演としてその作品に必要な芝居や道筋を見つけるということが求められていました。だからこそ、主演として自分がずっと画面に映り続ける立場で、繊細で余白の多い映画に向き合うのは、全く新しい体験で。主演という立場では、足し算だけでなく引き算も必要で、様々なアプローチや主観を試して迷いながら進んでいく。この迷い続けるというプロセスが初めての経験でした。今回得た経験やアプローチを活かせる部分があれば次に活かすし、全く違うアプローチが必要とされるかもしれない。それはまだわからないですが、確かに今回、新しい方法や視点に出会えたというのは間違いないと感じています」

――西野さんは喋らない役でしたが、どうアプローチされましたか?

西野「思い切って演じました。感情を持たない幻影なので、引き算を意識して、昴が目の前にいて話しかけてくれるシーンでも、反応したくなる気持ちを抑えて無の状態を保つようにしました。ただ、表情まで完全に無にしてしまうと違和感があるので、柔らかい雰囲気の時もあれば、そうでない時もあるように演じ分けていました。昴がその瞬間にどう呼びかけているかによって変化する存在だったので、一貫性がなくてもいいのかなと思って、自由にやらせていただきました」

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