お屋敷のような家で生まれ、9歳で両親を突然の飛行機事故で亡くした衛(江口)が唯一、現実逃避できたのが本を読んでいる時間。孤独な学生時代を過ごし、初めて心を許したのが一ノ瀬だった。共に夢を見て起業した仲間に騙され、女性起業家に贈られる"プラチナ・ウーマン・オブ・ザ・イヤー"の授賞式でスッピンで土下座することになる展開は1話目からまさにジェットコースター。社員たちの人生を守るために私財を売り払い、古い一軒家を借りて再スタートを切るのは衛自身が大事なものを突然、失うことの悲しさを知っているからだろう。そんな大ピンチに出現したのが貧乏な家で育ち、会社に入れてほしいと懇願する優(赤楚)。立場上、誰にも弱みを見せられなくなった衛だったが、お節介で押しの強い優だけは例外。時には助言に黙って頷き、決断力があるキリッとした社長の顔とは真逆の守ってあげたくなる顔を見せる。その一方で優の熱い想いに無表情で「そうきたか」とボケる場面などは不器用で愛されることに臆病な面を想像させ、江口の多彩な芝居力に見入ってしまう。

■主人公をめぐって町田と赤楚がバチバチになる場面も？

話題を呼んだドラマ「チェリまほ」の赤楚と町田啓太が共演しているのも本作の見所のひとつ。町田が演じているのは衛の右腕的存在の秘書・宮村空で過去の恩義により、ずっと衛を守っていくと心に決めている。そのスマートな振る舞いと人柄に優が嫉妬したりと恋愛感情も絡みつつ、公私共に山あり谷ありの物語で浮き彫りになるのは優と共に自身も成長し、気持ちを言葉にできるようになった衛の信頼できる人柄だ。金銭トラブルなど困難が次々に襲う中、それぞれがたどり着く"スーパーリッチ"とは？松嶋菜々子、古田新太、中村ゆり、志田未来らキャストも適材適所。江口のクセ強めキャラを活かした人間味あふれる演技がたっぷり楽しめる。

文＝山本弘子