名優・菅原文太をはじめ、父母に平田満と宮崎美子、グランマには波乃久里子、13年前の事件を知るグランパの親友の息子役を浅野忠信...と共演陣もベテランの実力派ばかり。彼らに囲まれながらも石原はまったく物怖じもせず、新人とは思えぬ堂々たる演技を見せる。

13年ぶりに会う刑務所帰りの祖父という異質な存在と時代錯誤な振る舞いに戸惑いながら、少しずつ心を開いていく珠子。グランパとの微笑ましいやりとりや心を通わせ成長していく様を初々しくも自然体で好演している。

珠子の芯の強さを感じさせる凛とした姿、怒りを秘めた表情も印象深い。まさに原石らしい素朴な笑顔にも惹きつけられる。「サード」(1978年)でキネマ旬報監督賞やブルーリボン賞などを受賞した東陽一監督をして、「将来が楽しみ」と言わしめる表現力を発揮した。

監督の言葉通り、魅力的な俳優へと成長した石原。デビュー作で第27回日本アカデミー賞ほか6つの映画祭・映画賞にて新人賞を受賞したが、以降も連続テレビ小説「てるてる家族」(2003年)でヒロインを務めるなど華々しい活躍を続ける。そして、人気女優となった今も自身を変えようと努力をやめない。眩い輝きを放つデビュー作とリアルな母親役を熱演した「ミッシング」では、あまりのギャップに驚かされるだろう。

原石感あふれる姿から母となった現在まで、その軌跡と成長を見比べていただきたい。

文＝中川菜都美