伊藤沙莉、「伸び伸びしている感じは自分ともリンクしている」役柄とは――映画『風のマジム』

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©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社

――高畑淳子さん(祖母・カマル役)、富田靖子さん(母・サヨ子役)との共演はいかがでしたか?

「お2人とは朝ご飯や夜ご飯を一緒に食べて、普通に実家にいるような気持ちにさせていただきました。一緒に食卓を囲むことにまったく違和感がなく、家族と思える空気を出してくださる方々だったので、やりやすかったです。大先輩ですし、本当に素敵な役者さん達ですが、そういったことを忘れちゃう"おばあ"と"お母さん"なんですね。自分がそこに生きるということがスムーズにできたのはお2人のおかげだと思います」

――滝藤賢一さんが沖縄の醸造家・瀬那覇仁裕を演じています。伊藤さんと滝藤さんのコンビは、朝ドラ『虎に翼』(2024年)での家庭裁判所の師弟関係を思い出します

「滝藤さんは強いですよね。本当にお酒を作っていそうじゃないですか。職人にしか見えないですよね?(笑)この作品をやっているとき、夫に『滝藤さんが出るんだよ』と話したら、『醸造の人?』とすぐ当てられて(笑)。『プロフェッショナルの役をやったらぴったりだと思う』と言うんです。実際に対面していても『真心』とか言わせたら、それだけで説得力があって。私は滝藤さんと目が合うと、だいたい泣きそうになるんですけど、常にまっすぐこっちを見る目に、内側で燃えている何かを湛えていて、目で語るのが凄い方。短い期間で1人の人間の成長を描くのは、どうしても点描的になりがちですが、滝藤さんや他の共演者の方々と『今どんな状態だったっけ』みたいなことを共有しながら作れたのはありがたかったですし、楽しかったですね」

©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社

――モデルとなった金城祐子さん、そして原作者の原田マハさんと現場でお会いしたときの印象はいかがでしたか

「実在する方を演じるのは、緊張するんです。モノマネするわけではないので、そこは気にせず、台本から感じたものを観る方に伝わればと思って演じていましたが、お二人は応援してくださっていて、それが力になりました。金城さんはご自身と少し似ているとおっしゃっていましたね。もちろん顔とかじゃないですが、まじむが(後輩の妻)志保ちゃんの家にいるときの撮影を見に来てくださっていて、泣いちゃっていたんですよね。ご自身のいろんな歴史を思い出されたんだと思います」

――まじむはある意味"無謀なチャレンジ"に挑んでいますが、その推進力はどこから来ると考えますか

「私は結局、"欲がない人"って強いなと思うんです。あるべきプライドと必要のないプライド、両方を持っている人もいれば、どちらかしか持っていない人、どちらも持っていない人もいる。まじむの場合は、もともとプライドはなかったけれど、プロジェクトを進めていく中で譲れないものが生まれて、プライドが育っていった人だと思うんです。だからこそ、それ以外の欲がない。夢中だから『これでのし上がろう』といった私欲はなくて、それが人の心に純粋に刺さる言葉につながっているんだと思います」

©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社

――まじむのように、伊藤さんご自身が夢中になっていることはありますか?

「私が夢中になるのは、やっぱりお芝居です。好きですし、やっていてすごく楽しいなと思います。あとは話すことも好きで、人と会話するのも好き。その延長でラジオのお仕事につながったりもしています。アウトプットするのが意外と好きなのかもしれないですね」

――役柄を"演じる"というよりも、その役になりきっていくのはどんな瞬間ですか?

「お芝居中に人と関わっているときですね。お芝居って、自発的にやっているように思われがちですが、実は人からスイッチを押してもらうことの方が多いんです。与え合いながら空気感が生まれていくものだと思っているので、自分が作っていくというよりは、ふわ~っと連れていかれる感覚がすごくあります」

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作品情報

「風のマジム」
2025年9月12日(金)より全国公開
出演:伊藤沙莉/染谷将太/尚玄/シシド・カフカ/橋本一郎/小野寺ずる/眞島秀和/肥後克広/滝藤賢一/富田靖子/高畑淳子
原作:「風のマジム」原田マハ(講談社文庫) 
脚本:黒川麻衣 監督:芳賀薫 

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