若かりし頃の石黒賢×東幹久が醸し出す、繊細かつスリリングな魅力...宮部みゆき傑作ミステリー「龍は眠る」
俳優

対して、織田直也を演じる東幹久の演技は、圧倒的な「圧」をもって視聴者に迫る。織田は孤独な生い立ちゆえに唯一心を通わせる七恵を、異様なまでの執着心で守ろうとする。東といえば、かつてはトレンディドラマなどで見せた都会的で軽やかなイメージ、あるいはバラエティ番組での明るいキャラクターが広く知られている。
だが、本作での彼は、そのパブリックイメージを根底から覆す「ギラついた狂気」を全身から放っている。特に、高坂が七恵に近づくことへの嫉妬と不安が噴き出すシーンは圧巻だ。東は狂気と優しさという、相反する感情をその険しい眼光の中に同居させている。この激しさは、他の作品で見せる柔和な表情とは一線を画す、彼自身のキャリアにおける一つの到達点と言っても過言ではない。
物語のラストに向け、石黒演じる高坂の「冷静な観察者」としての立ち位置が崩れ、東演じる織田の「必死な守護者」としての情念とぶつかり合う。この二人の対立と共鳴こそが、本作の着地点をより切なく、そして忘れがたいものにしている。
四半世紀以上の時を経ても色褪せない、人間の心の深淵を覗き込むようなこの衝撃を、ぜひその目で確かめてほしい。
文=石塚ともか











