小泉今日子×満島ひかりの息ぴったりな名演で"冤罪と復讐"をコミカルに描く!宮藤官九郎脚本「監獄のお姫さま」

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カヨたちの刑務所での共同生活を振り返りながら、彼女たちが誘拐計画を企てた理由や、それぞれが出所して再会し、実行に移すまでを描く同作。誘拐という大それたことをしながらも、開始早々ハプニングが起こったり、どこか詰めが甘かったりと、彼女たちはドタバタ騒ぎ。軽妙な掛け合いに一瞬で引き込まれるのが、さすが宮藤脚本と言える。

主演の小泉が演じているのは、夫をナイフで刺し、殺人未遂罪で服役することになったカヨ。しかし彼女はそんな恐ろしい事件を起こしたとは思えないほど、 "普通のおばちゃん"なのだ。どこかポンコツで不器用で、刑務所に来たばかりの時から必死にルールについていこうとするもトラブル続き。ふたばからは"問題行動ばかり"と叱られる始末だ。有名人ゆえに刑務所内でも少し次元の違う存在である千夏に気やすく話しかけて目をつけられたり、空気が読めないゆえに同部屋の"姉御"こと明美たちと揉めたりすることも...。

そんなカヨを小泉が人間臭さ全開で好演している。本来の小泉と言えば、トップアイドルとして、そして俳優としてずっとスター性を背負ってきただけあって、眩い存在感を放つ。しかしカヨを演じる時にはそれらを一切封印して、生活感さえにじみ出ているのだから、すごい。見栄を張ったり、感情的になったり、息子を思うがゆえに干渉して少しうっとおしがられたりと、等身大で、どこか抜けていて、だけどいつもまっすぐだから憎めない。

一方でカヨのお節介さは時に周囲の心を掴み、時に誰かを救う。だからこそ千夏、明美、洋子も、しのぶを助けたいというカヨに賛同していくわけだ。

刑務官のふたばもそのうちの1人。受刑者たちを厳しく指導するふたばは、物語序盤では"鬼刑務官"という言葉がぴったりな印象の人物。しかし、そんな彼女がいかにして、出所した後のカヨたちの計画に手を貸すことになるのか。その過程を満島が細やかに映し出している。

当初は受刑者たちの些細な行動にも「調査するよ」「懲罰されたいのか」と言い放っていたふたばも、カヨの良い意味で空気を読まずに誰とでも同じ温度感で話すところや、不器用なくせにお節介であたふたしている姿に心を開いていく。ドスの効いた声と鋭いまなざしから一変、柔らかい空気を纏い、雑談なんてしながらクシャっとした笑顔を見せる瞬間には、思わず心が緩む。ふたばの厳かさと時折顔を出すコミカルさ、可愛らしさ、そしてしのぶを助けたいという気持ちが芽生えてからの葛藤まで、一言では語りきれないふたばの多面性と複雑な心情の変化を繊細に表現した満島の芝居にも注目してほしい。

刑務所という閉鎖的な空間を舞台にしながらも、物語が終始明るくクスっと笑えるのは、宮藤脚本の妙でもあり、キャスト陣の演技が成せる技でもある。コメディでありながら、根底にあるのは"冤罪と復讐"という重いテーマ。それを重すぎず、しかし軽んじすぎずに絶妙なバランスで痛快に描き出している。刑務所にたどり着くことになった不器用な人間たちの悲喜こもごもを明るく、そして深く届ける傑作群像劇だ。

文=HOMINIS編集部

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