近年の阿部は、重厚で頼れる人物を演じる印象が強い。その現在地から「最後の弁護人」の有働を見ると、阿部がもともと持っていた軽妙さもよく伝わってくる。ここでの阿部は、ただかっこいいだけでも、頼もしいだけでもない。少しひねくれていて、簡単には心を開かず、周囲を振り回すこともある。それでも、いざという時には信じたくなる。そんな扱いづらさと頼もしさが同居した人物を、阿部は無理なく演じている。
須藤理彩演じる石田良子との関係も、有働の魅力を見せるうえで大きい。良子はもともと、有働の事務所開設資金の返済を求めて彼のもとを訪れる銀行員。そこで出会う有働は、彼女が思い描いていた弁護士とはまるで違う。立派な事務所もない。丁寧な応対もない。最初は戸惑い、振り回されるばかりだが、事件に向き合う姿を見るうちに、有働がただ変わった人ではないことがわかってくる。視聴者も良子と同じように、最初は戸惑いながら、少しずつ有働のことが気になっていく。
今井翼演じる赤倉俊哉、浅野ゆう子演じる神崎美智子ら、周囲の人物とのやり取りも楽しい。有働は一人で何でもこなす完璧な弁護士ではない。周りとぶつかり、呆れられ、ときには助けられながら事件に向き合っていく。だからこそ、人間味がある。弱さやだらしなさも見える人物が、それでも誰かのために動く。その姿が、きれいに整ったヒーローとは違う魅力になっている。
「最後の弁護人」の有働には、阿部が長く愛されてきた理由がよく表れている。かっこよさだけで押し切るのではなく、少し荒っぽく、不器用で、扱いづらい人物までも魅力的に見せてしまう。近年の重厚な役柄で阿部を知る人にとって、有働は少し意外で、どこか新鮮にも映るはずだ。事件の真相を追う法廷ドラマとしての面白さはもちろん、ひと癖ある弁護士を通して、阿部のユーモアや人間味に触れられる。「最後の弁護人」は、現在の阿部を知る今だからこそ、その魅力をもう一度確かめたくなる作品だ。
文=川崎龍也


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