舘ひろしの"スターの愛嬌"が詰まった「免許がない!」「免許返納!?」運転できない大スターが見せる可笑しみと色気
俳優
©光和インターナショナル/日本テレビ
南条の初登場から漂うのは、堂々としたスターの風格だ。現場では周囲から一目置かれ、本人も自分が特別な存在であることをよく分かっている。振る舞いは大きく、言葉にも自信がある。ところが、運転免許がないという一点によって、その完璧に見える姿に急に隙が生まれる。面白いのは、南条自身がその隙を必死に隠そうとするところだ。恥ずかしさを見せまいとすればするほど、余計に可笑しい。大スターとしての威厳と、教習所で一人の受講生になる姿の落差が、南条弘という人物を一気に愛おしく見せている。
教習所に入った南条は、映画スターとして特別扱いされる場所から、ハンドルを握れば初心者として扱われる場所へ移る。撮影現場では周囲を動かす側にいる男が、教官の指示に従い、失敗すれば注意され、思い通りにならない自分と向き合っていく。そこで見えてくるのは、スターの裏側にある不器用さだ。南条はプライドが高く、見栄も張る。周囲を振り回す面倒くささもある。それでも、できないことをできるようになりたいという気持ちはまっすぐだ。免許を取ることは、彼が自分自身を取り戻すための挑戦にも見えてくる。その大げささを、舘はあくまで真剣に演じている。
自分がどう見られているかを分かった上で、そのイメージを作品の中で遊ばせる。これは、長くスターであり続けてきた俳優だからできることだ。南条は、舘のかっこよさを別の角度から引き出したキャラクターである。完璧に見える男が、見栄っ張りで、不器用で、少し面倒くさい。その人間らしさまで含めて、目が離せない存在になっている。
そして「免許返納!?」では、そんな南条が「免許を返納するのか」という問題に向き合うことになる。若い頃には"持っていないこと"が大きな弱点だった免許が、年齢を重ねたことで"手放すかどうか"を考えるものになる。そこには、車を運転できるかどうかだけでなく、年齢を重ねた自分をどう受け入れるのか、周囲の声とどう向き合うのかというテーマも重なってくる。免許をめぐる物語が、人生そのものを映す題材となっているのも興味深い。
自動車教習所を舞台に、スターの見栄や焦り、免許取得までの悪戦苦闘をテンポよく描きながら、舘ひろしのかっこよさと愛嬌を同時に引き出している「免許がない!」。南条弘という映画スターを通して、完璧に見える男が少しずつ人間らしい隙を見せていく面白さがあり、舘の芝居の柔らかさにも改めて驚かされるはずだ。「免許返納!?」の公開を前に、ぜひ見返しておきたい。
文=川崎龍也


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