「ストーカー」という言葉が定着する遥か前、その恐怖をお茶の間に叩きつけた怪作がある。1993年にTBS系で放送された金曜ドラマ「誰にも言えない」だ。
本作は、最高視聴率34.1%を記録したドラマ「ずっとあなたが好きだった」の"冬彦さんブーム"を受け、主演の賀来千香子と佐野史郎の黄金コンビが再びタッグを組んだ作品。前作を凌駕する能動的な狂気で日本中を震撼させた問題作。
きっと主題歌である松任谷由実の「真夏の夜の夢」が流れるだけで、あのゾクゾクする夏が蘇る人も多いのではないだろうか。
本作のエンジンが佐野史郎の怪演なら、その恐怖を何倍にも増幅させたのは賀来千香子の受けの芝居である。
彼女が演じた加奈子は、単に怯えるだけの悲劇のヒロインではない。過去に麻利夫(佐野)に捨てられ、心身に深い傷を負いながらも、現在の夫(羽場裕一)との平穏な幸せを守るために必死に抗うタフさを持つ女性だ。
だからこそ、幸せの絶頂にいる彼女のマンションの隣室に、麻利夫が引っ越してきた瞬間の絶望が際立つ。賀来が大きな瞳を見開き、全身を硬直させて放つリアルな悲鳴と困惑の表情が印象的。彼女の圧倒的な美しさと「何としても日常を守る」という強い意志があったからこそ、泥沼の愛憎劇が単なるホラーにならず、上質なサスペンスとして成立していたのだ。







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