
一方、前作の「冬彦」が母親の庇護下にいる受動的な怪物だったのに対し、本作で佐野史郎が演じた山田麻利夫は、自ら罠を仕掛ける能動的な悪魔だった。
盗聴、盗撮、部屋への侵入――。現在でいう完全なストーカー行為を、麻利夫はエリートの仮面を被りながら冷徹に実行していく。フリーマーケットで加奈子のセーターを購入し、それを夜な夜な抱きしめる姿など、当時の視聴者をリアルに恐怖させたシーンの連続。
しかし、麻利夫もまた、山咲千里演じる妻・美雪という歪んだ家庭環境ゆえにコントロールできなくなるときがある美雪の被害者でもあった。被害者であり加害者、そして加奈子への執着だけが生きる意味という悲哀に満ちたキャラクターを、佐野は怪演を超えた「怪作」として見事に血肉化してみせた印象だ。

物語の終盤、2人の関係が前作の登場人物たちの「生まれ変わり(輪廻)」を想起させる展開へと繋がっていくカタルシスも、脚本の君塚良一、プロデューサーの貴島誠一郎らヒットメーカーによる緻密な計算の賜物。当時の作り手と役者陣の「本気の狂気」がこの作品には詰まっている。
放送から30年以上が経過した今なお、私たちの脳裏に焼き付いて離れない「誰にも言えない」は、賀来千香子と佐野史郎という、稀代の表現者がガチンコでぶつかり合って生み出した、平成テレビカルチャーの不滅の金字塔といえるだろう。
文=於ありさ







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