長澤まさみが的確な心情表現で魅せる、自由奔放な北斎の娘・お栄――永瀬正敏との共演で絵師親子の絆を描いた「おーい、応為」
俳優
(C)2025「おーい、応為」製作委員会
「日日是好日」などで知られる大森立嗣が脚本・監督を担当した同作。長澤とは2020年の「MOTHER マザー」以来のタッグとなった。
長澤が演じているのは、北斎の娘で後に葛飾応為の名を授かる、お栄。彼女の怒鳴り声が響く、冒頭のシーン。夫の下手な絵を見て苛立ちを募らせたお栄は、啖呵を切り、威勢よく家を飛び出していく。カラッとした佇まいの長澤は、お栄が男勝りでかっこいい女性だと一瞬で印象付ける。
その後、北斎が暮らす家に出戻ってからも、彼女の自由奔放さは際立つ。元夫の文句を言いながら煙草をふかし、北斎に邪魔者扱いされながらも「しばらく厄介になる」と言って床にごろんと寝転がる。火事を見ることが好きで、朝まで見物しては煤だらけの顔で明け方の道を歩いたり、北斎に反対されながらも犬を飼いだしたりと、うらやましいほどに気ままだ。しかし、そんなお栄も好意を抱く初五郎の前では少女のような表情を見せ、北斎と言い合いになった時には怒りをあらわにすることも。芯が強いようで脆さもあり、荒々しいようで優しくもある。お栄の入り組んだ内面を表現する長澤の演技が見事だ。
一方の北斎は、出戻って来た娘に優しい言葉をかけるでも歓迎するでもなく、無骨な態度をとる。それに負けじと言い返すお栄とは似たもの親子だ。北斎は絵に夢中になるあまりお栄をしかりつけたり、こき使ったりもする反面、彼女に絵の才を見出し、その技術はしっかりと認めている。師弟でもある2人はいわゆる親子の関係とは少し違うのかもしれないが、互いへの確かな情と尊敬を感じられる。そんな親子の関係性を、永瀬と長澤は緻密に映し出している。
特に、晩年にかけての北斎を演じている時の永瀬の演技は圧巻だ。メイクによる見た目の変化ももちろんあるのだが、年老いて少しずつ体が小さくなり仙人のような風貌になっていく過程、そしてそれでもなお、北斎の中に燃え続けている絵画への熱を体現している。老境の北斎とそれを支えようとするお栄を映すシーンでの、永瀬と長澤の演技の応酬も迫力がある。
(C)2025「おーい、応為」製作委員会
お栄と姉弟のような友情を築く善次郎を飄々と演じた高橋など、魅力的なキャスト陣によって、芸術に魂を捧げた絵師たちの生きざまが描かれた作品だ。
文=HOMINIS編集部











