原作の東野圭吾は、「放課後」でデビューして以来、「秘密」「容疑者Xの献身」「さまよう刃」など数多くの作品を世に送り出してきた。「さまよう刃」で少年法をめぐる問題に切り込み、その10年後に発表した「虚ろな十字架」では、死刑制度という重厚なテーマに果敢に向き合った。
正義とは何か、罪は償えるのか――誰もが問われながら答えを持てないテーマを、東野は小説という形で読者に突きつけた。
そして、物語のもう一つの軸となるのが、赤楚衛二演じる仁科史也だ。慶明大学病院で小児科医として働き、妻と息子を持つ史也だが、ある出来事をきっかけに「加害者家族」という立場に置かれることになる。
一方、香取演じる中原は、最愛の娘を失った「被害者遺族」。異なる立場にある2人の人生が交錯する中で、「罪」と「償い」をめぐる問いが浮かび上がっていく。
本作で描かれるのは、単純な善悪では割り切れない人間の感情だ。「最愛の家族を殺されたとき、犯人に何を望むのか」「罪は償うことができるのか」。原作で東野圭吾が投げかけたこの問いに、香取と赤楚がそれぞれ「被害者遺族」と「加害者家族」という立場から向き合う。
監督を務めるのは、「64-ロクヨン-」「とんび」「ラーゲリより愛を込めて」などを手がけてきた瀬々敬久。重厚な人間ドラマを描いてきた瀬々監督の演出と実力派キャスト陣の拮抗は見ものだ。そして、撮影間際まで東野とスタッフが一丸となって脚本を練り上げたという本作は、著者の情熱と遺志が息づく特別な1作と言える。
香取慎吾がこれまでとは異なる静かな悲しみをまとって演じる中原道正。その表情の奥にある感情と、赤楚衛二演じる仁科史也との対峙を通して浮かび上がる「罪」と「償い」の意味を、ぜひ見届けてほしい。
文=HOMINIS編集部



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