坂東玉三郎が語る"シネマ歌舞伎"へのこだわり

撮影=岡本隆史

歌舞伎舞台をHDカメラで撮影し、スクリーンでデジタル上映するシネマ歌舞伎。2019年1月12日には、坂東玉三郎の珠玉の2作「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)/楊貴妃」が公開される。「沓手鳥孤城落月」は落城寸前の大阪城を舞台に、淀の方(玉三郎)の、息子・秀頼(中村七之助)への強い愛を描く。一方の「楊貴妃」は夢枕獏作の舞踊劇。市川中車を相手役に迎え、絶世の美女を玉三郎が舞う。この公開を記念して、衛星劇場では1月1日に坂東玉三郎主演のシネマ歌舞伎「阿古屋」「『鷺娘』サウンドリマスター版」「二人藤娘/日本振袖始」を特集放送する。

シネマ歌舞伎は第32弾になりますが、今回の2作品の見どころを教えていただけますか。

「今回、新歌舞伎の『沓手鳥孤城落月』『楊貴妃』の2作がシネマ歌舞伎になりました。『阿古屋』(第26弾)のときも新歌舞伎をシネマにするのは難しかったんですが、『~孤城落月』も同じで。ただ、歌舞伎の合方が入らないSEと物音だけの演出、例えば乱戦の音、雨音、遠雷の音の演出は逆にシネマ向きでした。舞台の音に、新たに音を付け加えて映画風に加工したら、映像作品のような仕上がりになりまして。また、特別映像用に樂家の茶室に赴き、淀の方の時代の茶碗や高炉なども情景と一緒に解説させていただきました。若い方や、この作品を初めてご覧になる方に少しでも分かりやすいものになっていればと思います。歌舞伎座とはまた違った趣でお楽しみいただければ嬉しいですね」

<シネマ歌舞伎>「阿古屋」

特に、淀の方の母の情念が浮き彫りになる表情は圧巻でした。

「表情にカメラが寄れますからね。そこもシネマ歌舞伎ならではですよね」

「沓手鳥孤城落月」と「楊貴妃」の2作を並べた意図は?

「実は、最初はこの2作は並ばないものじゃないか、って話もしたんですよ。でも、連続して観てみたら"歴史の中に埋もれた美女たち"と気付いて、この2作の並びでいいんだ! って思ったんです。淀の方も楊貴妃も、時の権力者の影で悲劇に墜ちていった女ですからね」

カメラは何台で撮影されたのでしょうか?

「7台で本番の歌舞伎舞台を2日間撮影し、それを編集しました。今、カメラが小さくなったので歌舞伎座にも台数を多く入れられるようになったんですよ」

玉三郎さんが最初にシネマ歌舞伎に関わられたのが、12年前の第2弾『鷺娘/日高川入相花王』ですが、シネマ歌舞伎という形態に対するこだわりは?

「舞台中継の映像を上映するのではなく、シネマ歌舞伎じゃないと観ることができない映像をお届けすること。カメラの台数を多くしているのも、全てはシネマ歌舞伎をご覧になるお客さまのため。特別映像ではバックステージもお見せしますが、夢を壊さないものであることを心掛けています。『阿古屋』では、出の前の緊張感がバックステージ映像になっていますが、そういった選び抜かれたシーンをお見せしたいですね。あとはやはり、『鷺娘/日高川入相花王』の頃から音にはこだわってきましたが、当時に比べて今は音をきれいにする技術がどんどん進歩してきましたので、今回新たに『鷺娘』の音を作り直すことにしたんです。」

玉三郎さんは映画監督でもあられますし、今回の2作品も編集・監修されていらっしゃいますが、編集のルーツは?

「映画『外科室』(1992年)を監督した頃から、日活の映画編集技師、鈴木晄(あきら)さんの編集室に入れていただいて、晄さんの作業をずっと見ていたんです。編集の基本は晄さんを見習ってきました」

<シネマ歌舞伎>「鷺娘」サウンドリマスター版

まだまだ進化していくメディアと、伝統芸能の付き合い方はどのようにお考えですか。

「私が作るものに関して、映像技術としては正直ここまでかなと今は思っています。シネマ歌舞伎がこれより先の進化についていくかというと、私はいかないと思うんです。映像であっても"データ"ではなく、ちゃんと何かを感じるものであってほしい。あくまでも歌舞伎を"作品"として見ていただきたい想いが強くありますね。そして、皆さんに歌舞伎を通して伝えていきたいことを、自発的にできる時代であるということを意識していかなければならないなと思っています」

劇場で観るときの音も魅力を感じますし、シネマ歌舞伎ならではの静寂さも美しい。1つの作品で2度楽しめる感覚を得ることができますね。

「それは特に『~孤城落月』だったからできた演出です。映像で演出しやすい時代背景、状況の作品なので。ただ、終わり方は難しいんですよ。これは初演された明治時代から大変だったと思います。舞台の真ん中に立って見得を切らないと終われない(笑)。でも今は、サーッとフェイドアウトしても作品として成立する、お客さまに納得して観ていていただける良い時代になりましたね」

文=堀江純子

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放送情報

特選歌舞伎~坂東玉三郎特集~

<シネマ歌舞伎>「阿古屋」
放送日時:2018年1月1日(火)12:00~

<シネマ歌舞伎>「鷺娘」サウンドリマスター版
放送日時:2018年1月1日(火)13:45~

<シネマ歌舞伎>「二人藤娘/日本振袖始」
放送日時:2018年1月1日(火)14:30~

チャンネル:衛星劇場

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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