昨年末に東京、新潟、大阪、愛知で上演された舞台「ロミオとジュリエット」が、3月10日(日)に衛星劇場で放送される。同舞台は、ウィリアム・シェイクスピア作品の中でも特に有名な恋愛悲劇を宮藤官九郎の演出で送るもので、ロミオ役を三宅弘城、ジュリエット役を森川葵が演じた。
今回、宮藤官九郎と三宅弘城に本作を作り上げるまでの苦労や裏話を語ってもらった。
――三宅弘城さんをロミオに迎えた『ロミオとジュリエット』というのはとても面白い企画に感じました。最初に、今回の作品が生まれた経緯を教えてください。
宮藤「ぶっちゃけてしまえば、プロデューサーさんのアイデアでした(笑)。僕にはない発想だったので、面白いなと思いました。それに、僕はシェイクスピア作品に詳しいわけではなく、『ロミジュリ』に関しても、勝手に恋に盛り上がっている若い男女の話という印象しかなかったんです(笑)。でも、そうやって恋愛に夢中になっている男女って、どこかおかしいというか、ある意味でバカになっていると思うんです。そうした"普通じゃない"おかしさと、そんな2人を客観的に見ている目線のある『ロミジュリ』って、いままでないんじゃないかとも思って。そこで、物語の主人公は当然この2人だとしても、彼らを取り巻くほかの登場人物にもしっかりスポットを当てた構造の作品にしていこうと考えていきました」
――三宅さんは、ロミオ役のオファーがあったとき、どのように感じましたか?
三宅「最初は絶対に冗談だと思ってました(笑)。これはダマされているな、と。だって50歳の僕が16歳の役ですからね(笑)。稽古がはじまってからは腹をくくりましたけど。次に苦労したのは、やはりセリフでした。僕自身、シェイクスピア作品は初めてで、あの独特の詩的な言葉というのは覚えるのが本当に大変だったんです。ただ、翻訳家の松岡和子先生が『メモラブル』とおっしゃっていたんですが、シェイクスピアの言葉って、頭に入れるのは大変だけど、抜けづらいんですよね。それは本番に入ってから特に感じました。自然と口から出てくるようになるし。ですから、本番ではシェイクスピアのセリフを言える喜びを感じながらの毎日でしたね。......といいながらも、よくセリフを噛んでしまってましたけど(笑)」
――宮藤さんは今回の舞台を通して、シェイクスピア作品のどこに魅力を感じましたか?
宮藤「魅力というか、同じ劇作家の目線で戯曲を読むと、"この人はこれをどういう心境で書いたんだろう?"ってさっぱりわからないセリフが多いなっていうのが印象的でしたね(笑)。『マクベス』に出てくる"綺麗は汚い、汚いは綺麗"というセリフもそうですけど、言ってることはなんとなく理解できても、その言葉の本質までは説明してないんですよね」
三宅「そういう、反対の言葉をつなげるセリフ多いですよね。『ロミジュリ』でも"覚めた安眠"とか、"冷たい炎"とか出てきますし(笑)」
宮藤「"鉛の羽根"とかね(笑)。そうした言葉って、きっと話す役者にとっても、耳にするお客さんにとっても、すごく気持ちのいいものだと思うんです。でも、あえてそれを違和感のあるように表現することで、新しいシェイクスピアの解釈が見えてくるんじゃないかという思いもありましたね」
三宅「そうなんですね。ちなみに今回の演出は大変だったの?はたから見ていると、自分が役者として出演していない分、すごく気がラクそうだなって感じたけど(笑)」
宮藤「いや、これはもう、ほんとラクでした(笑)」
三宅「ははははははは!それはやっぱり背負うものが少ないから?」
宮藤「というか、自分が生み出したホンについては、恥ずかしさや大切さがあるから、なんとかしてよく見せようと思うんだけど、自分が書いてないものだと、『こう書いてあるんだからいいんじゃない?』って思ってしまう(笑)。どうしても役者さんがこの台本どおりだと芝居ができないっていうなら多少は修正するけど、そうじゃないなら、"ここに書いてあるし、このままでいいよね"って押し通せる(笑)。それに主観が入ってないから、冷静にセリフを読み解けるというのもありますね。自分が書いたものだとどうしても、"こうだ!"って思っちゃってるから」
三宅「なるほどね。今回はあえて誤読というか、上手く違う解釈をしているところがありますもんね」
宮藤「そうですね。ただ、もし僕がシェイクスピアだったとして、今回みたいな演出をされたら、たぶん怒ると思いますけどね(笑)」
放送情報
M&Oplaysプロデュース「ロミオとジュリエット」
放送日時:3月10日(日)16:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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