コラム二スト・吉田潮が語る「十月十日の進化論」の面白さ

日本の女性は心の中とSNSでは毒づいているのに、日々愛嬌と愛想笑いを強要され、明確な意思表示を避ける奥ゆかしさと器用さを求められる。ドラマでもぼんやりしたヒロインが支持されがち。しかしこのドラマでは真逆で、不器用一辺倒だ。

ヒロインの小林鈴(私の大好きなオノマチこと尾野真千子)は英国留学もした昆虫分類学博士だが、虫への偏愛だけが強く協調性も愛嬌もない。愛想笑いは絶対にしない女だ。勤務先の大学の教授(志賀廣太郎)に見限られ解雇される。やけ酒に酔った勢いで元恋人の武(田中圭)と一戦交えた鈴がうっかり妊娠するところから、物語は始まる。

オノマチは頑なで不器用な女性を演じるのが実にうまい。万人受けを狙って持ち味が行方不明の女優とは格が違うのよね。

鈴は無職だが、一人で産む決意をする。自立と強がってはみるものの実質は孤立。世界は敵と他者しかいないと思っていた鈴が、妊娠期間の"十月十日"で周囲に厳しく諭され、見守られて、人としての進化を遂げる。

尾野真千子、田中圭ら出演の「ドラマW 十月十日の進化論」

喫茶店のマスター・保(でんでん)は鈴の実父だが、母・文子(りりィ)は女手ひとつで鈴を育てた。このワケアリな父母の心模様も見どころのひとつ。

親友・冴花(佐藤仁美)やバイト先の先輩・理恵(森谷文子)、鈴の欠点を辛辣に指摘。厳しい言葉だが優しさも伝わる。軽薄に見える武も、空回りで遠回りだが、心根は優しい。不器用でも無愛想でも、己の弱さを認めた時から味方は増える。

特に、鈴の母や産婆・政子(佐々木すみ江)の言葉には救いがあった。親の覚悟と資質を問うような息苦しさや圧はない。自信がなくて当たり前で、不器用上等、あとは寛容、と教えてくれる。

よしだ・うしお●'72年生まれ。ドラマ好きのコラムニスト兼イラストレーター。週刊誌や新聞でテレビ・ドラマ評を執筆。時々テレビにコメンテーターとして出演。著書「くさらないイケメン図鑑」など著書多数。ネコ2匹と同居中。

文=吉田潮

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放送情報

ドラマW 十月十日の進化論
放送日時:2021年3月19日(金)23:00~
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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