見る人を物語に引き込む...星野源が映画『罪の声』で見せた演技

『罪の声』より
『罪の声』より

ドラマ「着飾る恋には理由があって」に主題歌「不思議」が起用されるなど、シンガーソングライターとしても俳優としても話題が途切れない星野源。そんな星野がシリアスに振り切って演じた作品が小栗旬とW主演を務めた映画『罪の声』(2020年)だ。原作は塩田武士の小説。『花束みたいな恋をした』などで知られる土井裕泰がメガホンをとり、「MIU404」などの野木亜紀子が脚本を担当した本作は、硬派な社会派ミステリーとなっている。

1980年代に全国を震撼させた未解決事件をモデルに、小栗演じる新聞記者の阿久津と、京都で父親から受け継いだテーラー店を営む星野演じる曽根が事件の真相を探っていく中で出会い、相棒のような関係になっていく物語でもある。妻と娘と平穏に暮らしていた曽根はあることがきっかけで、深い苦悩に陥る。星野が『罪の声』で演じた役柄、阿久津との心に残る場面を再検証したい。

『罪の声』に出演した小栗旬と星野源

(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

■古いカセットテープに録音された声が暴き出したものとは?

ひょんなことから見つけたカセットテープ。亡き父が残したものだろうと気になった曽根はラジカセを引っ張り出し、録音されたものを聴いてみることに。子どもの頃の自分の声に微笑んだのもつかの間、テープに刻まれていたのはたどたどしい声で何かを指示する奇妙なフレーズだった。曽根は調べるうちに、複数の食品会社が標的にされた誘拐、毒物混入などの事件にたどり着く。

その犯罪に3人の子どもたちの声がかかわっていたことを知り、知らない内に犯罪に加担させられていたかもしれない衝撃と恐怖に怯え、顔色を失くす星野の演技が、迷宮入りした事件の謎に見る人を引き込んでいく。

(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

■小栗旬と星野源のコンビが重厚な作品に風を吹かせる

誰が自分に声を吹き込ませたのか?手がかりを得るために曽根は昔のことを知っている人物を片っ端から当たり、証言を引き出していく。一方、上司に事件のことを調べるように言われた阿久津は、日本国内やロンドンを飛び回り、当時の関係者に近い人物に粘り強く取材を続ける。テーラーを訪ね、真実を明らかにすることに意義があると伝える阿久津に、「どんな意義ですか?」「子どもの未来は、どうなるんです?」と曽根は答える。

運命に導かれるように出会った2人。阿久津のスーツの袖のボタンがとれかけていることに気づいて曽根がおもんぱかるシーンや、車を降りて缶コーヒーを飲みながら語り合うシーンは、映画の中にひととき爽やかな風を吹かせるかのようだ。

どこかコミカルな役を演じることも多い印象の星野だが、本作では大人になるまで何も知らなかったという複雑な思いに苦しみながら、35年前の事件を追っていく、実直で家族思いの職人を演じきっている。

文=山本弘子

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放送情報

罪の声
放送日時:2021年7月31日(土)13:00~ほか
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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