小栗旬演じるエリート官僚の使命感に胸を打たれる...日本を襲う未曾有の危機を描いたドラマに注目

「日本沈没―希望のひと―」に出演する小栗旬と杏
「日本沈没―希望のひと―」に出演する小栗旬と杏

原作:小松左京『日本沈没』

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の北条義時役が話題となっている小栗旬。近年、ますます俳優としての評価が高まっている小栗が、日本を襲う未曾有の危機を救おうとする主人公を演じたのがドラマ「日本沈没―希望のひと―」だ。原作は1973年に刊行された小松左京によるSF小説「日本沈没」で、これまでに何度も映画、ドラマ化されてきた空前のベストセラー。ちなみに、同年には五島勉の解釈による「ノストラダムスの大予言」も刊行され、当時の読者を震撼させた。あれから約50年の時を経て制作された本作は、2023年の東京を舞台に、原作をアレンジした内容。大地震によって日本列島が沈むという設定や地球温暖化、感染症のパンデミックも盛り込まれたストーリーが、他人事ではない問題として迫ってくる。初回から高視聴率を叩き出し、最終回は2時間を超える拡大スペシャルとなった本作で、まるで日本人の良心を体現したような、小栗の人間味溢れる役にフォーカスを当ててみる。

■小栗が決して諦めない"希望のひと"であるエリート官僚を熱演

原作:小松左京『日本沈没』

小栗が演じている天海啓示は、未来を期待される環境省のエリート。各省庁の次代を担う精鋭達を招集した"日本未来推進会議"のメンバーでもある。天海は日本地球物理学界の異端児・田所博士(香川照之)を訪ねた際に聞いた、「いずれ伊豆沖の島が沈没し、それが関東沈没の前兆になる」という話が気がかりに。そんな中、経済産業省に勤める親友の常盤(松山ケンイチ)とスキューバダイビングをしている時、博士の話を裏付けるような体験をする。

内閣総理大臣の東山(仲村トオル)から信頼を置かれている地球物理学の最高権威・世良教授(國村隼)に「関東沈没などありえない」と否定されても「私は今、日本の未来の話をしているんです!」と真っ向から対立し、実際に島が沈む映像を見て危機感を募らせる。本当に起こるかどうかわからないことよりも日本経済を優先させる副総理兼財務大臣・里城(石橋蓮司)とも対立した天海は、田所絡みで偶然出会った新聞記者の椎名(杏)と裏で手を組み、国民に記事を通して関東沈没の危機を知らせる決断をする。椎名に自分のやっていることが怖くないのか問われ、「何も起こらなかった時は壮大な非難訓練は終わりましたと言って、みんなで笑って乾杯すればいい」と返すシーンは男前だ。天海が"希望のひと"なら椎名は"正義のひと"。作中で何度か怖いという台詞が出てくるように、天海も内心は怯えている。恐怖感と想像力、そして使命感を持っているからこそ、日本を救う次の一手を考えて行動するリーダー像を、小栗が熱演している。

■未曾有の危機が襲う中、天海の情熱と人間力がまわりを動かす

原作:小松左京『日本沈没』

次々に襲う地震により、東京の沿岸部は海に沈み、やがて日本国民は海外に移住を余儀なくされることになる。混乱の連続の中、偏屈で変人の田所が唯一、信頼していたのが天海。経済産業省という立場もあり、当初は天海の強引なやり方に不信感を持っていた常盤も、国民を守るために奔走する親友・天海のために総理を説得する。高度成長時代を支えてきただけに現実を受け入れられない副総理を説得し、先輩の失意をおもんばかって天海が涙を浮かべる場面も胸を打つ。日本を動かす熱量と人情、機転と判断力を合わせ持つ天海のような官僚が増えたら...とドラマを見た視聴者も多いのではないだろうか。キャリアを重ね、演技に深みが出た今の小栗旬だからこそ背負えた役だと思う。

文=山本弘子

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放送情報

日本沈没―希望のひと―
放送日時:2022年8月13日(土)10:00~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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