2021年、映画『ゴジラvsコング』でハリウッドデビューを果たし、10月からはドラマ「日本沈没-希望のひと-」に主演。さらに来年度の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも主演を務めるなど、俳優として充実したキャリアを積み重ねている小栗旬。そんな彼が、ユニークな織田信長像を見せる映画が『信長協奏曲』だ。
2016年1月に公開され、興行収入46.1億円の大ヒットを記録した『信長協奏曲』は、2009年からコミック誌「ゲッサン」で連載された石井あゆみの人気作を、フジテレビ開局55周年を記念して、アニメ、テレビドラマ、映画などのメディアミックスで展開された大型プロジェクト。映画版『信長協奏曲』は同プロジェクトの集大成的な位置付けとなる。
本作で小栗旬が演じるのは、ひょんなことから戦国時代にタイムスリップし、跡継ぎ争いから逃れるために、織田信長本人から、信長として生きていくことを託されてしまう現代の高校生・サブロー。底抜けにポジティブで、その人間的魅力で周囲の仲間たちを巻き込み、引っ張っていくというキャラクターだ。本作の稲葉直人プロデューサーも、小栗旬のキャスティングについて「サブローのイメージにピッタリ」と太鼓判を押している。
テレビドラマ版は、数々のヒットドラマを生み出してきたフジテレビの月9枠において初の時代劇となったが、映画を視野に入れて制作されたということもあり、制作費は従来の月9ドラマの2倍近くに及んだという。結果、このスケールの大きな物語は老若男女、幅広い層の視聴者に支持され、高視聴率を記録した。テレビドラマ版では小谷城の戦いまでが描かれたが、映画版では最大の見せ場となる"本能寺の変"が描かれることとなる。
劇中で小栗は、明るい熱血漢で、妻の帰蝶(柴咲コウ)や家臣からも慕われている織田信長(サブロー)と、周囲の信望が厚いサブローに嫉妬を覚えるようになる明智光秀(本物の織田信長)の2役を、1人で演じている。まったくベクトルの違う役柄であるため、2つの役を演じ分けることはそれほど大変なことではなかったというが、その分、出番が途切れずに、終始出演することになった。なお余談だが、小栗は「劇団☆新感線」の舞台『髑髏城の七人』で、「かつて信長の影武者だった」という出自を持つ捨之介という役柄を演じたことがあるが、見比べてみるのも面白い。
この作品における小栗の意気込みも強かったようで、シナリオが完成すると、監督やプロデューサー、キャスト陣などと数時間にわたるディスカッションを何度か行い、シナリオをブラッシュアップさせていった。また、山田孝之演じる羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)は、本作においても出色の存在感だが、この役は小栗が山田孝之に直接オファーを出したものだったという。
物語としては奇想天外で、リアリティーを追求するタイプの作品ではないが、スタント無しで行われた合戦シーンや、本能寺が全焼するシーンなどはCGを使わずに、セットを本当に燃やして撮影を行った。そうした"リアルであること"を大切にして撮影されたスペクタクルシーンの数々は迫力がある。
本物の火にこだわった本能寺炎上場面はオープンセットに火を放ち、炎に包まれて燃え上がるさまがCGでは味わえない大迫力となった。2役を演じる小栗、帰蝶役の柴咲コウほか、俳優陣の息の合った演技に加え、織田信長と羽柴秀吉の因縁など、史実を踏まえつつ加えられたひねりも面白い。
文=壬生智裕
放送情報
信長協奏曲
放送日時:2021年10月7日(木)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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