12月14日に30歳の誕生日を迎えた高畑充希。2016年にはNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のヒロイン役で連続ドラマ初主演を果たし、それ以降も「過保護のカホコ」(2017年)、「忘却のサチコ」(2018年)、「同期のサクラ」(2019年)と途切れることなく話題作の主演に抜擢され、新主演ドラマ「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」の放送も控えている。
舞台仕込みの高い演技力でどんなキャラクターも体現し、最近ではこれまでに経験のない役にも挑戦して演技の幅を広げている高畑。そんな彼女が子育てに奮闘するシングルマザーを初めて演じたのが、映画『明日の食卓』(2021年)だ。
椰月美智子の同名小説を名匠・瀬々敬久監督が映画化した本作は、住む場所や家庭環境は異なる"石橋ユウ"という同姓同名の子どもを持つ3人の母親を描く群像劇。
10年ぶりの映画主演となった菅野美穂は、2人の息子たちを夫と共働きで育てるフリーライターの留美子をナチュラルに演じた。スーパーで子どもを叱りつける場面など、「あるある」と思わず共感してしまう。共働きゆえの悩みや愚痴を呟く生活感溢れる菅野の表情もいい。
郊外のマイホームで夫と自慢の一人息子と共に毎日を送る専業主婦・あすみ役を、尾野真千子が務めた。姑や実父との距離感がリアルで、一見すると何不自由ない生活に見える、尾野の抑えた丁寧な演技が光る。
そして、若いシングルマザー・加奈役が高畑だ。ローンの返済を抱えながらコンビニやクリーニング店で昼夜問わず働き、息子を懸命に育てる母親を演じた。大阪出身ゆえの違和感のない関西弁で、実母や弟との軽快なやりとりも小気味よい。生活に困窮している疲れた表情も子供の前で明るく振る舞う姿も、若くても大阪の"おかん"らしい。女手ひとつで育てる苦労がだんだんと浮き彫りになりながら、貧しさに負けじと涙を堪える高畑の健気な表情もグッとくる。
少しずつ各家庭の内情が明らかになり、思いもよらぬ方向へと展開していくストーリーから目が離せなくなる本作。ただ、菅野、尾野、高畑の鬼気迫る演技が何よりの見どころで、演技派の3人がまったく異なる環境で暮らす母親をそれぞれの色を出して体現した。子どもを心から愛し、弱くて、強い――それは、どこにでもいる母親の姿なのかもしれない。
文=中川菜都美
放送情報
明日の食卓
放送日時:2022年1月29日(土)7:30~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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