号泣必至の感動作...石原さとみが等身大の演技で描く、残された時間を大切に生きる女性

石原さとみには凛とした女性の役が似合う。源義経の愛妾・静御前を演じた2005年の大河ドラマ「義経」から法医学者を演じた「アンナチュラル」(2018年)まで、不条理な悲劇に見舞われても運命に屈せずそれに立ち向かう人を演じてきた。

2021年制作のスペシャルドラマ「人生最高の贈りもの」では、自分の命が残り少ないと知り、これまで腹を割って話すことのなかった父親との思い出を作ろうとするゆり子を演じた。

「人生最高の贈りもの」に出演する石原さとみ
「人生最高の贈りもの」に出演する石原さとみ

ゆり子の父は元大学講師で翻訳家の笹井亮介(寺尾聰)。母親は既に亡くなっており、ゆり子は父の教え子である繁行(向井理)と結婚して、彼の勤務する学校がある長野の安曇野で暮らしていた。

ところがある日、突然、ゆり子は東京の実家に帰ってきて、しばらく父親と一緒に暮らすと宣言。亮介は理由を明かさないゆり子をいぶかしみながらも、妻の死後に始めた料理の腕を披露し、娘と交流する。ところが数日後、妻の墓の前でゆり子が泣き崩れているのを目撃し、帰省の本当の理由を知るため、長野の繁行の元へと向かう。

石原は、2014年の「失恋ショコラティエ」から美しい容姿を活かし無敵の女子力を持つ役を演じて人気が高まった。映画『シン・ゴジラ』のカヨコはキャラ立ちした役の最たるもの。「高嶺の花」や「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」でもプライドの高い美女を演じ振り切った芝居を見せてきたが、本作では一転、抑えた演技で、どこにでもいそうな一般人の主婦になりきっている。父親の作った料理を食べ素直に「おいしい」と言ったり、近所の人と冗談を言いおなかを抱えて笑ったりするナチュラルな表情がとても魅力的だ。

ただ、ゆり子は父親にもその周囲の人にも自分の病気を明かさず、同情されることを拒む。どこにでもいそうな女性ではあるが、多くの女性がそうであるように、自分の人生を自分で決める意志と運命に立ち向かう強さを持っている。父親と夫は彼女の意志を尊重し、見守るしかない。そんなゆり子が最後に父親と話してから見せる泣き笑いの表情は素晴らしく、その結末まで見ると「人生最高の贈りもの」というタイトルが何を意味するのかが分かってくる。

脚本は「ファイトソング」(TBS系)が放送中の岡田惠和。「ファイトソング」でもヒロインは病で耳が聞こえなくなる可能性があり、ミュージシャンである好きな人の作った音楽をいつまで聞けるのかというタイムリミットを抱えている。2021年の「にじいろカルテ」ではヒロインの医師が多発性筋炎にかかっていた。病という設定を用いて人生の時間が有限であることを見せ、その真実を知った人は愛する人に何をできるのかということを描き続けている。

「人生最高の贈りもの」は他にも石橋冠監督をはじめ、昭和の時代からドラマを作ってきたスタッフが顔をそろえ、懐かしいホームドラマのような落ち着きと役者のセリフのやり取りで見せる。この座組で石原の深い演技がじっくりと味わえる秀作だ。

文=小田慶子

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放送情報

人生最高の贈りもの
放送日時:2022年2月18日(金)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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