今年1月期の主演ドラマ「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて」が注目を集めている高畑充希。NHK連続テレビ小説の第94作「とと姉ちゃん」(2016年)で"朝ドラヒロイン"として脚光を浴びた後も数々の作品に主演し、個性的なキャラクターで多彩な表情を見せてきた。そんな彼女が、ちょうど昨年の1月期には「にじいろカルテ」でテレビ朝日系ドラマで初主演を飾り、共感度たっぷりの"ポンコツ女ドクター"ぶりが話題を集めた。
高畑充希と言えば、演技力だけでなくその卓越した歌唱力で、ミュージカルでも高く評価されてきたキャリアは周知の通り。「とと姉ちゃん」から遡ること3年前、女優としての転機となった「ごちそうさん」(2013年)では、ミュージカル仕込みの美しい歌声も披露して反響を呼んだことも。その後は舞台やドラマ、映画にと存在感を発揮していった。
そしてヒューマンドラマの名手・岡田惠和とタッグを組み、新たな医療ドラマに挑んだ作品が「にじいろカルテ」だ。「ドクターX」シリーズをはじめ医療ドラマには定評のあるテレビ朝日だが、この作品はちょっと毛色が違う。エピソードのメインは山奥の"虹ノ村"に住む気さくで明るい人々の日常で、スーパードクターも登場しなければ、緊迫の手術シーンもほとんど描かれない。
高畑が演じたのは、村の診療所にやってきた内科医・紅野真空(くれの・まそら)。東京の大病院で働いていたが、持病が発覚したことで居場所を失い、偶然知った小さな山村の医師募集に応募すると即採用。自身の病はひた隠しにしながら、虹ノ村診療所での生活をスタートさせる。
この真空、医療ドラマの主人公とは思えないほど人間くさい。使命感に駆られる医師としての顔ももちろんあるが、プライベートは"ポンコツ"。部屋も散らかり放題で、料理のセンスもゼロ。へこんだら泣き、嬉しい時は無邪気に喜び、イラっとしたら思いっきり顔に出す...。歌唱力のある高畑だけに、村ののど自慢大会に参加するシーンでは美しい歌声を披露する場面も。あらゆる意味で、一般的にイメージする"医療ドラマの主人公"とはかけ離れたキャラクターなのだ。
そんなツッコミどころが満載な真空を迎え入れる診療所の同僚2人も変わっている。ツナギ姿にサングラスという風体の外科医の浅黄朔(井浦新)は、ふざけた言動が多い掴みどころのないキャラクター。だが医療現場での経験は豊富で、なんだかんだ頼りになる存在だ。
看護師の蒼山太陽(北村匠海)は、仕事ぶりは超優秀だが、マジメすぎるのが玉にキズ。ワガママな朔にすぐキレてケンカになってしまうが、内心では朔を医師として信頼している。そんなデコボコ3人組が共同生活を送り、時にコミカルに、時に大まじめにぶつかり合って成長する姿が、「にじいろカルテ」の最大の見どころだ。
真空を包み込む朔と太陽、村人たちの温かさも心地いい。1話ラストで病気のことを隠していた真空が謝るシーンでは、「ここで生きてはいけませんか?私、もうここしか居場所がないんです」と涙する彼女に対して、朔や太陽、村人たちが「医者で患者か、最強じゃん」「いていいんですか、とかじゃなくてさ、いてください!」と、ごく自然に、そして温かく受け止める。村人たちにとってはかけがえのない"愛される存在"へと成長していく過程も、見ていて清々しいのだ。
ヒットメーカー、岡田惠和の初となる医療ドラマ脚本を演出するのは、『神様のカルテ』(2011・2014年)の深川栄洋監督。人と人との心の繋がりを丁寧に描き出すことに定評のある2人がタッグを組んでいることも、同作が王道とは一線を画す医療ドラマになっている所以だろう。ありそうでなかった癒し系の医療ドラマ「にじいろカルテ」で心のデトックスをしてみては?
文=酒寄美智子
放送情報
にじいろカルテ
放送日時:2022年3月9日(水)23:00~
チャンネル:テレ朝チャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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