役の幅を広げ続ける佐藤健白石和彌監督作で見せた胸が苦しくなる怒りと葛藤の熱演

「ひとよ」
「ひとよ」

日本アカデミー賞優秀監督賞・優秀脚本賞を受賞した映画『凶悪』(2013年)で注目を浴びた監督・白石和彌。以降も『日本で一番悪い奴ら』(2016年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)、『孤狼の血』(2018年)など、話題作をコンスタントに生み出しているが、白石監督作品によって新たな一面を見せる俳優も多い。佐藤健もその一人だ。2019年の映画『ひとよ』で、これまでに見せたことのない姿で熱演を披露している。

佐藤健が演じた雄二の怒りや葛藤が感じられる「ひとよ」
佐藤健が演じた雄二の怒りや葛藤が感じられる「ひとよ」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

劇団KAKUTAの桑原裕子による同名舞台を、豪華キャストにより映画化した本作。DV夫を殺害した母と、それによって人生を狂わされた3人の子どもたちが15年後に再会し、苦しみながらも家族の絆を取り戻そうとする姿を描いている。佐藤と鈴木亮平、松岡茉優が心の傷を抱えたまま成長した三兄妹を演じた。

「ひとよ」
「ひとよ」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

佐藤演じる次男・雄二は、家族の運命が狂わされた一夜から母を許せずに生きてきた。うだつの上がらないフリーライターで、無精髭を生やし見るからにやさぐれた風体をしている。人との関わりを拒絶するような荒んだ目つきも、やり場のない怒りをぶつける姿も痛々しい。

しかし、母を信じ続ける妹や苦しみ続けてきた兄と、互いにぶつかり合う姿から複雑な感情が浮かび上がってくる。なぜこんなにも不自由で、何者にもなれないのか...。憎まなければ生きてこられなかった雄二の怒りや葛藤が感じられる佐藤の表情を見ているだけで胸が苦しくなる。

「ひとよ」
「ひとよ」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

重く湿った愛情を我が子に注ぐ母を演じた名優・田中裕子をはじめ、佐々木蔵之介、音尾琢真、筒井真理子、MEGUMIら個性豊かな俳優陣の演技も作品に深みを加える。そんな演技派たちの刺激を受けた佐藤の熱演は特に光るものがあった。家族だからこそ傷をさらけ出し、傷つけ、触れ合うことができる。愛おしく憎らしい絆の重みを考えさせられた。

「ひとよ」
「ひとよ」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

昨年は約10年にわたって主演を務めた代表作『るろうに剣心』シリーズが完結し、所属事務所からの独立など俳優としての転機を迎えた佐藤健。本格アクションはもちろん、コメディや青春ドラマでも存在感を発揮し、連続殺人事件の容疑者という難役に挑んだ『護られなかった者たちへ』(2021年)など、近年は役の幅も広げている。

その演技の振り幅は『ひとよ』ですでに開花し始めていた。名だたる俳優陣と佐藤ら三兄妹が丁寧に織り成した物語を通して、今一度家族の形や在り方に想いを馳せたい。

文=中川菜都美

この記事の画像

放送情報

ひとよ
放送日時:2022年5月6日(金)10:45~
チャンネル:スターチャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合があります

最新の放送情報はスカパー!公式サイトへ

キャンペーンバナー

記事に関するワード

この記事をシェアする

関連人物

関連記事

関連記事