吉高由里子が「わたし、定時で帰ります。」で演じた、現代の働く女性像

2024年に放送予定の大河ドラマ「光る君へ」で主人公の紫式部を演じることが決定した吉高由里子。33歳になっても、チャーミングな魅力は変わらずだ。肩に力が入っていないチルなムードで、あの笑顔に虜にされているファンも多いのではないだろうか。

そんな吉高がコロナ禍前の2019年に主演を務めたドラマが「わたし、定時で帰ります。」だ。

「わたし、定時で帰ります。」に出演する吉高由里子
「わたし、定時で帰ります。」に出演する吉高由里子

(C)TBS SPARKLE/TBS (C)2018 朱野帰子/新潮社

吉高が演じるヒロインの東山結衣はWEB会社の社員。残業をせず、無理をせず、忙しい時でも定時の18時には会社を出て、行きつけの中華料理店でビールを飲むのが至上のひととき。料理が得意で優しい彼氏・諏訪巧(中丸雄一)と、元婚約者で同じ部署で働く仕事人間のハイスペック男子・種田晃太郎(向井理)との気になる関係もありつつ、"働くこと"や"世代間のギャップ"について考えさせられるのが本作だ。部署のムードメーカーでもある結衣は、多くの人が抱いている吉高のイメージに近い役柄。"働き方改革"や"コンプライアンス"が求められる時代の中、吉高が演じた働く女性像とは?

■マイペースなようでいて、仲間に寄り添うヒロインを吉高が演じる

結衣がオンとオフを分け、定時で帰るようになったのには理由がある。前に勤めていた会社で夜遅くまで働き、心身ともにボロボロになった経験があり、婚約者だった種田が過労で倒れたのを目の当たりにしているからだ。さらに、結衣の父親は家庭を顧みなかった会社人間で、家事は妻任せにしていた典型的な昭和の夫。そんな背景もあって、仕事だけが人生ではないという考え方を強く持っている。かといって、結衣は同僚に"あとはお願い〜"と任せて帰ってしまうような無責任なヒロインではない。

(C)TBS SPARKLE/TBS (C)2018 朱野帰子/新潮社

PCの前に"今日やること"について書いた付箋が貼ってあり、仕事は効率重視。ダラダラ作業し、会社に泊まりがちなエンジニア、吾妻(柄本時生)に能率アップの方法を教えたり、キャパオーバーになってキレがちな新人の来栖(泉澤祐希)のことを「もう少し長い目で見てほしい」と種田に頼み、頑張りすぎる派遣社員の女子に「自分を大切に仕事しよう」と気持ちを楽にさせたりと、つねにまわりに目を配り、チームのみんなの健康を心配している。上から目線にならず、笑顔で寄り添う結衣は、会社のムードメーカー的ポジション。尊敬する先輩(内田有紀)が家庭と仕事の両立で悩んだ時も彼女の決断を間違っていないと肯定する。喜怒哀楽の表情がかわいくて憎めない吉高由里子の仕草や癒しの存在感が世代間のギャップやセクハラ、パワハラなどギスギスしがちな社会をやんわり埋める役割を果たしている。

■初共演の吉高と向井の本音をぶつけ合う演技も見どころ

涼しい顔をしてとんでもない量の仕事をこなしていると言われる種田は、部下はもちろん上司の福永(ユースケ・サンタマリア)からも頼られる存在。責任感が強く、弱音を吐かずに黙々と徹夜する種田にストレートに意見を言えるのは、婚約者だった結衣だけといってもいい。

(C)TBS SPARKLE/TBS (C)2018 朱野帰子/新潮社

弟や部下から「自分の気持ちがわかるはずがない」と言われて考えこむ種田に結衣が「とっつきにくいタイプだ」と言い、驚く種田に「自覚ないんだ」と欠点をまくしたてるシーンは、虚勢を張っている人や殻に閉じこもっている人たちの本音さえも引き出す結衣の本領発揮。

本作の放送の翌年、コロナ禍に突入したことで急速にリモートワークが進み、会社の在り方も変化した。仕事に対する考え方や姿勢はそれぞれであっていいというメッセージがこめられた本作の主人公を、時に感情的になったり、泥酔して失敗するような役が似合う吉高が演じたからこそ、幅広い層に支持されたのだと思う。

文=山本弘子

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放送情報

わたし、定時で帰ります。
放送日時:2022年6月12日(日)11:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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