5月末まで上演されていた劇団☆新感線による舞台、いのうえ歌舞伎『神州無頼街』で主演を務めた福士蒼汰。この舞台を見て改めて、福士蒼汰の身体能力の高さを感じた。テレビドラマの主演の彼というと、恋愛ドラマのイメージがあるからだろうか、どうもアクションの印象が大きくなかったのだが、そう、彼は『仮面ライダーフォーゼ』(2011年テレビ朝日系)出身だった...。
福士のアクションは、『曇天に笑う』(2018年)、『BLEACH』(2018年)、『ザ・ファブル』(2019年)など、映画で堪能することができる。舞台『神州無頼街』にも通じる時代劇映画での初主演作となった『曇天に笑う』では、スタントなしでド派手なアクションにも挑んだ。
監督は「踊る大捜査線」シリーズの本広克行。冒頭の大勢のエキストラを使った祭りのシーンは、映画らしい豪華さ。ノンストップで追われていた悪党をカメラが止まったところでサッとのしてしまう華麗なアクションは、福士演じる主人公・曇天火の登場を強く印象付ける。
物語の舞台は、明治維新後の滋賀県・大津。ここには300年に1度よみがえり、人間に災いをもたらすという大蛇(オロチ)の伝説があった。その大蛇を封じるためにこの地に根付いた曇神社を長男・天火(福士蒼汰)、次男・空丸(中山優馬)、三男・宙太郎(若山耀人)という曇家(くもうけ)の曇三兄弟が守っていた。伝説の日が近付き、大蛇の力で政府転覆を企てる忍者集団・風魔一族が暗躍。一方、明治政府の岩倉具視(東山紀之)は、大蛇を封じるために陰陽師・安倍晴明の子孫である安倍蒼世(古川雄輝)、鷹峯誠一郎(大東駿介)、武田楽鳥(市川知宏)、犬飼善蔵(加治将樹)、永山蓮(小関裕太)から成る直轄部隊「犲(ヤマイヌ)」を投入し、大蛇をめぐる三つ巴の闘いが繰り広げられる――。
時代劇アクションといえば剣術だが、天火の武器は「鉄扇」。必然的に接近戦が多くなる鉄扇での闘いに福士は、学んでいるジークンドー、カリ、USA修斗といった世界の武術や格闘技を応用し、華麗なアクションで魅せてくれた。
曇家に居候する金城白子を演じた桐山漣(※「漣」は正しくはしんにょうの点一つ)も『仮面ライダーW』(2009年テレビ朝日系)出身。福士とのライダー共演もファンには見逃せない。また、YouTubeでは「犲」メンバーたちによる主題歌「陽炎」(サカナクション)に合わせたダンスビデオ『曇天ダンス~D.D~』が公開されている。ダンス経験のある古川が自分で振り付けをしたというが、彼の華麗なソロブレイクダンスには驚かされる。シリアスな本筋とは違う俳優陣の奮闘を見るのも楽しい。
物語には、兄弟や友だちとの絆も描かれている。福士蒼汰のアクションの素晴らしさに心を躍らせつつ、「どんな時でも笑っていられる強い男になれ!」という信条をもつ天火の笑顔に、爽快な気持ちをもらえる作品だ。
文=坂本ゆかり
放送情報
曇天に笑う
放送日時:2022年7月2日(土)21:00~ほか
チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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