ダメダメな男も応援したくなるキャラクターにしてしまう、松坂桃李の情感たっぷりな演技

「今ここにある危機とぼくの好感度について」(ファミリー劇場)
「今ここにある危機とぼくの好感度について」(ファミリー劇場)

スーパー戦隊シリーズで俳優デビュー後、今やベテラン俳優の風格すら漂う松坂桃李。近年では、アウトローな刑事役から孤独な大学生役まで「演技の幅の広さに限界がないのでは?」と思えるほどの演技力を見せつけている。そんな松坂の演技の幅の広さを改めて感じることができる作品が、ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」だ。

同ドラマは、渡辺あやによるオリジナル脚本作品で、名門大学で次々と起こる不祥事に翻弄される大学の広報マンの姿を通じて、現代社会が抱える矛盾とそこに生きる人々の悲哀に迫るブラックコメディ。主演の松坂は、元テレビ局アナウンサーで大学の広報マン・神崎真を演じる。

この神崎という役は、松坂が演じてきた役の中でもトップクラスに「ダメダメ」な役柄。「ダメダメ」と言ってもぐーたらで仕事ができないというわけではなく、いわゆる「サトリ世代」の特徴をデフォルメしたようなキャラクターで、一番大切な自分の存在意義を守るために「事なかれ主義」を貫くというダメダメさなのだ。松坂はこの「いそうでいない」キャラクターを感情豊かに演じて、役に命を吹き込んでいる。

神崎は、アナウンサー時代、好感度を気にするあまり一見意味があるようで実は中身のない話しかせず、「AIなのでは?」と揶揄されるほどだった。だが、好感度だけで保っていた人気に翳りが見え始める。そんな中、大学時代の恩師である総長の三芳(松重豊)からのオファーを受け、大学の広報担当者に転職する。新天地となる大学で優柔不断な総長や隠蔽体質の理事、上司の意向に応えるべく奮闘するのだが、大学の利益のために不正を隠蔽することに骨身を削るため、事はなかなか思うように進まない。

スーツ姿で大学の広報職員を演じる松坂桃李
スーツ姿で大学の広報職員を演じる松坂桃李

ここで特筆すべきは、神崎は基本的に大学の隠蔽工作のために動いているため、観ていても共感といった感情が湧きづらく、はじめは理事たちからの無茶振りにてんてこ舞いな姿にクスリとさせられるくらいなのだが、物語が進むにつれていつしか神崎を応援してしまっていることだ。

それは、信念などなくただただ波風を立たせないように奮闘する神崎を、松坂が情感たっぷりに演じることで命を吹き込み、ダメダメながらも人懐っこく憎めない役作りに加え、一生懸命に生きている姿で魅了してくれるからに他ならない。そして、少しずつ成長していく様子に無意識的に惹かれてしまうのだが、成長していないようで成長しているという微妙なグラデーションのさじ加減が絶妙。

さらに、極めつけは、最終話の神崎の変貌ぶりだ。詳細はぜひ作品を見ていただきたいのだが、人が変わったかのような神崎の変化を松坂がどう演じているのか、ビフォーアフターのギャップと共に変わっていない部分にも注目していただき、松坂の素晴らしい演技を堪能してみてほしい。

文=原田健

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放送情報

今ここにある危機とぼくの好感度について
放送日時:2023年1月5日(木)19:30~ほか
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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