佐野史郎が夢中になった、生誕120年を迎える小津安二郎監督作品「この世界観がたまらんです」

2003年に収録した竹下景子と佐野史郎による音声版「東京の合唱<新音声版>」
2003年に収録した竹下景子と佐野史郎による音声版「東京の合唱<新音声版>」

(C)1931 松竹株式会社

そんな小津フリークの佐野さんは、「東京の合唱」(1931年)や「落第はしたけれど」(1930年)などいくつかのサイレント作品の<音声版>に声を吹き込んでいる。

「収録は20年ほど前ですが、とにかく精いっぱいやった記憶はあります。トーキー以前の活弁士たちの重要さというのは理解していたつもりなので、それと同じ風なことやそれっぽいことをやったところで嘘になりますし、失礼になりますから。今思うととんでもない責任を背負っていたんだな、と。僕はナレーションの仕事や朗読もずっと続けていますけれども、声の表現は本当に難しい...。それでも、小津監督が実景を映し出すように、そこにあるものを受け止めながら音を配置できていけたらいいなとは思います」

小津作品は以降の映像作家たちに多大な影響を与え、今なお世界中にファンがいる。なぜ時代を超えて愛され続けるのだろうか。

「当時の道徳観や価値観は今の時代には当てはまらないものもありますけど、それでも変わらない人間の『生態』が描かれているからじゃないですかね。その生態を容赦なく図録しているので、どんな時代でも相照らせるし、人間はしょせんそういう生き物なのだと思い知らされる。同時に、『愚かな人ばかりに見えるかもしれないけど、この映画を見ているあなた自身はいかがですか?』というメッセージとも受け取れます。つまり『そんな環境の中で、今、あなたはどんな行動を取りますか?』という問いを、突き付けられている気がします」

さの・しろう●1955年3月4日生まれ、島根県出身。1986年の「夢みるように眠りたい」で映画主演デビュー。以降、数々の映画・ドラマ・舞台で活躍。朗読や写真、執筆、バンドの活動なども行う。2024年1月14日(日)まで神奈川県・箱根彫刻の森美術館で写真展を開催中。

取材・文=山崎ヒロト

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放送情報【スカパー!】

大人の見る繪本 生れてはみたけれど 4Kデジタル修復版<新音声版>(※2K放送)
放送日時:2023年12月4日(月)3:05~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

東京の合唱<新音声版>
放送日時:12月3日(日)10:20~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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