――主人公カン・ミンハク役にキム・ヨハンさんを起用した経緯は?
「カン・ミンハクは、イケメンで可愛くて人気者だけど、頭がいいタイプではなく、時々人を唖然とさせるようなキャラクターなんです。ということは、その役を演じる俳優は、見た目がイケメンで可愛いだけでなく、実はとても頭が良くなければなりませんよね? 俳優のキム・ヨハンさんは、まさにそんな人です。さらに、自分の魅力に酔っていない、純粋で落ち着いた雰囲気が必要だったのですが、初めてお会いしたときから、彼のそうした性格を感じ取ることができました」
――ミンハクに振り回されてしまう工学科の超理系女子チュ・ヨンサン役にファン・ボルムビョルさんを起用した経緯は?
「カン・ミンハク役のキム・ヨハンさんは、かなり早い段階で『この人しかいない』と決めていたので、他のオーディションやミーティングはほとんど必要ありませんでした。一方で、チュ・ヨンサン役については本当に、本当に、本当に多くの女優さんに会いました。どなたと一緒に作っていくべきか、悩みに悩んで......。そんなふうに2か月以上続いたオーディションやミーティングのほぼ終盤で、ファン・ボルムビョルさんが入ってきて、目の前のペットボトルのキャップを自然に開けながら『そうね、ミンハク。あなたの話を聞いてみるわ』というオーディション用のセリフを読んだ瞬間――。共同演出のハン・インミ監督と、すぐに互いの顔を見合って、『この人だ!』という視線を交わしました。脚本家を"子を宿した母親"にたとえるなら、その瞬間はまるでお腹の中の赤ちゃんのエコー写真を初めて見たような感覚でした。ちなみに、ボルムビョルさんがヨハンさんとすでに高校を舞台にした青春ドラマで共演していた仲だということは、後になって知りました」
――現場でのキム・ヨハンさんについて教えてください
「ヨハンさんは意外と少し内向的な性格で、現場では監督である私と賑やかに意見を交わすタイプではなく、一人で何かに集中している時間が多かったんです。最初は、そのシャイな雰囲気がこの騒がしいコメディと合わなかったらどうしよう......と心配もしましたが、それは杞憂でした。カメラが回り始めた瞬間、彼はすぐに、可愛くて面白くて、時には少しおバカに見えるけれど、実はとても聡明なカン・ミンハクに変身するんです。キム・ヨハン俳優は、台本に書かれていない前後の文脈までしっかり把握している――まさに"演技の天才"でした」
――現場でのファン・ボルムビョルさんについて教えてください
「ファン・ボルムビョルさんが演じたチュ・ヨンサンというキャラクターは、本当にセリフの量がものすごく多いんです。少し大げさに言えば、他の全キャラクターのセリフを合わせたくらい。毎日一番早く現場に来て、一番遅くまで残って、あの膨大なセリフとアクションをこなすのは本当に大変だったと思います。それを立派にやり遂げました。演出陣がOKを出しても、自分が納得できなければ辛い中でも『もう一度やってみます!』と叫ぶことも多かったですね」
――「インフルエンサー」という存在が当たり前になった現在、本作のようなパッと見冴えない女子とイケメンインフルエンサーとの恋愛は妙にリアリティのある設定だと思いました。撮影にあたり最も意識・注力した点、こだわったポイントを教えて下さい
「ユニークでアイロニーな設定だからこそ、むしろリアリティを持たせることが重要だと思いました。人気インフルエンサーであればあるほど、ただ偉そうにしたりはしないはずですから。そこでカン・ミンハクというキャラクターが、一日の中で時間ごとに協賛商品の宣伝をSNSに投稿しなければならず、出なくてもいいイベントに顔を出し、体型維持のために運動をし、周囲の人々が常にスマホで彼を撮っても平気なふりをして受け入れるなど、そんなルーティンがあるということを表現しました。一方で、カン・ミンハクは動的でたくさん動くキャラクターですが、チュ・ヨンサンは主に座ってコーディングをし、一人で物思いにふけるので、静的に同じ場所にいるようなキャラクターです。その動的な人物と静的な人物が頻繁に出会い、ぶつかり合い、アプリ開発というミッションを通じて反発しながらも惹かれ合う姿を描くうえで、撮影時の動線を決めることが非常に重要でした。そこで私はいくつかの原則を立てました。カメラが止まっているときは登場人物を動かさなければならず、登場人物が止まっているときはカメラを動かさなければならない。すべてのシーンに適用できたわけではありませんが、主要人物のセリフが多く、それぞれを取り巻くキャラクターたちにも個性があるので、常に楽しく忙しい感じを出すように工夫しました。その結果、他のラブコメよりもドタバタコメディや活劇に近いシーンが多くなりました。キャンパスの真ん中でノートパソコンが壊れたり、バスケットボール対決があったり、講義室や廊下で大人のおもちゃが飛んでいったり、デモ隊と用役(警備員)がぶつかり合ったり、仮面をつけた格闘シーンまで......! 撮影だけでなく、衣装・メイク・美術などすべての部署が、その賑やかな動線を生み出すことに力を注ぎました」