広瀬章人竜王 タイトル獲得までの道のりと防衛戦展望

広瀬章人竜王
広瀬章人竜王

将棋界の頂点として名人と並ぶ存在である竜王。その竜王を現在保持しているのが広瀬章人竜王だ。広瀬はトップ棋士ではあるが、勝負師を感じさせないおおらかな雰囲気を持っている。

奨励会時代から天才の呼び声が高く、2005年に18歳で早稲田大学入学と同時にプロ入り。最初の大舞台は2009年の第40期新人王戦。決勝三番勝負は早稲田大学対決となり、後輩の中村太地四段(当時)を2連勝で破った。

2010年の第51期王位戦は予選で郷田真隆九段らを破って挑戦者決定リーグ入り。佐藤康光九段に敗れたものの、渡辺明竜王(当時)や木村一基八段(当時)らを破り4勝1敗で紅組リーグ優勝。白組をプレーオフを経て勝ち上がってきた羽生善治名人(当時)と対戦すると、難解な形勢だったが、一瞬の切れ味を見せた広瀬が勝ち、初のタイトル挑戦を決めた。

この時の原動力は四間飛車穴熊。アマチュアでは人気の高い戦法だが、プロでは昭和の時代に少し指されたものの、近年はほとんど見られなくなっていた。広瀬は独特の穴熊感覚に加えて、抜群の終盤力によって苦しいとされていた振り飛車穴熊にスポットを当てた。そんなマイナーな戦法を武器にタイトル戦の舞台まで勝ち上がったことにより、将棋界に四間飛車穴熊ブームを巻き起こす。

深浦康市王位(当時)との王位戦七番勝負の舞台でも振り飛車穴熊を主軸に戦う。3勝2敗で迎えた第6局は相穴熊から終盤の入り口で千日手となり、指し直し局は再び相穴熊から大熱戦に。最後に死闘を制したのは広瀬。4勝2敗で王位を奪取した。振り飛車穴熊を武器にしてタイトルを獲得したため、「振り穴王子」と呼ばれるようになる。

翌年の第52期王位戦七番勝負は羽生を挑戦者に迎える。2連勝で初防衛に向けて好スタートを切ったものの、羽生の底力の前に3勝4敗のフルセットで屈した。振り飛車穴熊をメインに戦っていた広瀬も、この少し後から徐々に居飛車にシフトチェンジをしていった。2019年現在は先手でも後手でもほぼ居飛車一本である。

2015年の第56期王位戦で羽生に挑戦するが、この時は1勝4敗で完敗となった。2018年の第11回朝日杯将棋オープン戦では決勝に進出。藤井聡太六段(当時)に完敗で、中学生での棋戦優勝の快挙を引き立てる役となってしまった。

しかし、その年は各種棋戦で勝ちまくり、竜王戦ランキング戦1組で優勝。広瀬の実績から竜王戦の決勝トーナメント進出の経験がなかったのは不思議なことだが、初出場にして挑戦者決定三番勝負まで勝ち上がる。深浦との三番勝負は第1局に敗戦、第2局も敗勢だったが逆転勝ちして波に乗ると、続く第3局も勝って挑戦権を得る。羽生のタイトル通算100期か無冠で注目され、朝日杯に続くプレッシャーの中での戦いとなった。

出だしは羽生が強さを見せて広瀬は2連敗。苦しい戦いが続く中、第3局、第4局を逆転で制す。第5局は敗れたものの、第6局は完勝で最終第7局へ。将棋史に残る一戦は、熱戦の末に広瀬が制した。羽生が27年ぶりの無冠とのことで、社会的にも大きなニュースとなった。

直後の棋王戦五番勝負で渡辺に完敗を喫するなど、竜王獲得後はやや負けが込んだものの、今年度に入って調子を上げていく。竜王戦七番勝負の相手は豊島将之名人に決まり、竜王VS名人の頂上決戦となった。

今年度のタイトル戦は挑戦者の奪取が続きタイトルホルダーの苦戦となっており、竜王戦七番勝負の第1局、第2局も豊島が制している。シリーズは矢倉、相掛かり、角換わりが中心となることが予想される。悪い流れを断ち、初のタイトル防衛を果たすことができるか、注目だ。

文=渡部壮大

この記事の全ての画像を見る

放送情報

(将棋)(生放送)第32期 竜王戦七番勝負第3局 2日目
放送日時:2019年11月10日(月)13:00~
※対局終了まで延長放送
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物