岩井勇気の推しアニメ>「時をかける少女」から「未来のミライ」まで細田守監督の作家性に僕が惹かれる理由

細田作品で一番好きなのは『バケモノの子』です。たしか細田監督に息子さんが生まれた時期で、父親が息子にかける無償の愛情みたいなものが感じられました。熊徹と九太は本当の親子ではないけれど、熊徹は育ての親であり父親同然という存在。物語中盤で本当の父親も登場するのですが、離ればなれに暮らしていた父親をちょっと悪く描くのかなと思ったら、そうではなかった。熊徹とは別タイプの良い父親として描かれているところも素敵だと思いました。僕が惹かれたのは本当の父親ではない熊徹が、自分を犠牲にしてでも九太(息子)への愛情を見せるところ。父親と息子、男同士の絆を感じてグッときました。

(C)2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
(C)2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

一人ぼっちの少年・九太と暴れん坊のバケモノ・熊徹の成長と絆を描く(『バケモノの子』)

「未来のミライ」は、細田作品で一番泣いた映画です。僕は独身で子育ての経験もないのですが、この作品はくんちゃん目線で楽しみました。僕も妹が生まれた時に、くんちゃんのように拗ねたりしていた話を親から聞いていたので、「こんな感じだったのかな」なんて思いながら観ました。見たもの、感じたものを屈折することなく受け止めるくんちゃんの姿を通して、自分にもこんな時期があったのかもと思うと、とても懐かしい感じがして涙がこぼれました。細田監督もくんちゃんの両親みたいに子育てに奮闘中なんだろうなと確認できる作品でもあります。

(C)2018 スタジオ地図
(C)2018 スタジオ地図

両親が生まれたばかりの妹に付きっきりで、拗ねてしまうくんちゃん(『未来のミライ』)

「おおかみこどもの雨と雪」は、僕の中で一番難解な細田作品です。母親をテーマにした作品だったので実体験に落とし込めず、ファンタジーの世界として捉えていたからかもしれません。細田作品には多かれ少なかれファンタジー要素はあるのですが、「サマーウォーズ」や「未来のミライ」から感じるファンタジーとは別物な気がしました。結末がすごく印象的で、子どもの人生なんだから、子どものやりたいようにやらせてあげるのが親というものなんだと考えさせられました。親のエゴで子どもに何かを強要するものじゃないんだなと。そのようなことが、いつかストンと理解できる日が来るのかなと思いながら、何度も観返している作品です。

(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

都会を離れ、自然豊かな田舎で子育てをし、母親として自身も成長していく花(『おおかみこどもの雨と雪』)

「時をかける少女」だけは、最初に観たのが映画館ではなく、TVのオンエアでした。高校2年か3年生の夏休みに、放送されているのをなんとなしに観たのが最初でした。めちゃくちゃ映画っぽいキャラデザだなと思ったら、貞本義行さん(「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」など)が担当していて、そこに惹きつけられました。今でこそ、タイムリープを描く作品はたくさんありますが、(原作の物語を)現代にしっかり落とし込んだうえで、うまく作用している。いまを生きる人たちの心に、きちんと刺さる描き方をしていると感じました。

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放送情報【スカパー!】

未来のミライ
放送日時:2021年8月9日(月・休)12:15~
時をかける少女(2006)
放送日時:2021年8月9日(月・休)14:00~
おおかみこどもの雨と雪
放送日時:2021年8月9日(月・休)15:45~
バケモノの子
放送日時:2021年8月9日(月・休)17:45~

チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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