朝ドラや大河といったドラマから映画、舞台に至るまで、さまざまな作品で多様な役を演じて"カメレオン俳優"と呼ばれる山田裕貴と、乃木坂46のメンバーで女優としての活躍もめざましい齋藤飛鳥。この次世代のエンターテインメント界を担う二人が初共演した作品が映画「あの頃、君を追いかけた」だ。
同作品は、台湾の人気作家ギデンズ・コーの自伝的小説の青春ラブストーリーを彼自ら映画化し、山田主演でリメークしたもの。地方都市を舞台に、山田演じる水島浩介と齋藤演じる早瀬真愛の切ない恋を描く。9月18日(金)にTBSチャンネル1で放送される。
浩介ら仲の良い男女7人の高校時代から現在までを描いたストーリーなのだが、もどかしさや甘酸っぱさ、きらめき、切なさといった「青春」ならではの要素がたっぷり詰め込まれており、誰しもが共感できる内容となっている。そんな中で、山田と齋藤の芝居が織り成す瑞々しさが、観る者をそれぞれの青春時代へと運んでくれる役割を担っている。
山田はひょうきんでお調子者、学校の先生から目を付けられている存在の浩介を「山田自身の学生時代をトレースしているのか」と錯覚させられるほどにリアリティーに富んだキャラクターとして作り上げており、物語の中を生きる一人の人間として表現。芯の通った人間性とその中にある多面性を軽やかな芝居で表わすことで、青春物には欠かせない"王道のテーマ"ともいえる進路の悩みや対人関係、変わりゆく環境に抗えない姿などに血を通わせている。
一方、齋藤はクラスの優等生で取っ付きづらいクールビューティなヒロインの真愛を、こちらも齋藤そのものだと思わせるような繊細な芝居で表現。おちゃらけている浩介らを冷めた目で見つめながらも、先生から浩介のお目付け役として指名されたことで浩介の人間性に触れて次第に心を開いていくさまは見事。しっかり者で生真面目という外枠を保ちながら、内に秘めた人間味を浩介の理解と歩調を合わせるように表しており、観ていて浩介と共に同じ時間を過ごしながら真愛という人物を知っていくことができる。
この2人が芝居によって表した本人とみまごうほどの瑞々しさが、よくある"共感の押し売り"ではない"自然発生的な共感"を呼び起こし、他にはない青春物語へと昇華させているのだ。特に、2人が距離を縮めていく場面でのそれぞれの役のアイデンティティはそのままに変容していく心の機微は映像作品でしか出せないものになっており、切ないクライマックスへと続くラブ要素の過程に大いなる説得力をもたらしている。
次世代のエンターテインメント界を担うであろう2人の、この作品でしか見られない瑞々しさを感じながら、登場人物たちの恋の行方と成長を見届けてほしい。
文=原田健
放送情報
映画「あの頃、君を追いかけた」
放送日時:2020年9月18日(金)20:00~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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