なぜイーボーはこれほどまでに過酷な挑戦をするのか？答えの一端は、冒険映像の合間に挟まれる、香港トップスター、トニー・レオンとのW主演でも話題となった映画「無名」(2023年)のチェン・アル監督との対話映像に見ることができる。

「興味のあることに挑戦するのが好きなので。初めての感覚が好きなんです」。熱帯雨林の旅では、目的であるカイナンテナガザルの鳴き声を聞いた瞬間、「うわっ！」と声を漏らしたイーボーの顔にスクリーンでもなかなか見られない少年のような笑顔が浮かぶ。「好きだから」「知りたいから」そして「感じたいから」...そんなシンプルな欲求に従って過酷な旅に挑んでいく。それがワン・イーボーという人なのだ。

エピソード1の熱帯雨林に続き、エピソード2では中国の青海省にそびえ立つ荘厳なガンシカ雪峰で初のスキー登山に挑戦。さらに、真っ暗闇の洞窟(エピソード3)、恐ろしいほど静寂な深海の世界(エピソード4)、中国のクライミング聖地として有名な陽朔で挑む岸壁(エピソード5)、そして広大なバダインジャラン砂漠にたった一人取り残され、孤独と向き合うエピソード6と、過酷な旅は続く。

単なる肉体的なチャレンジにとどまらず、自己発見の場ともいえる6つの旅をサバイブした末に彼が辿り着く境地とは...？極限で垣間見えるイーボーの"生き抜く力"が収められた貴重なドキュメンタリーだ。

文＝酒寄美智子