パティンソンが演じるミッキーは、ブラック企業に搾取される使い捨ての労働者で、もはや悲惨な現状を受け入れたような諦めた表情をしている。コピーしてリプリントされたミッキーたちは、同じ人間でもそれぞれ個性に誤差があり、微妙に異なる。17号はお人好しで気が弱く怠け者、18号は前向きで強い意思を持つが、反発し殺し合いかけた一人二役の2人が、バディを組んで反撃に転じる姿は胸を熱くする。

パティンソンは時にコミカルに、時にシリアスに、どこにでもいそうな等身大の青年の多面性や個性、変化と微々たる成長も、細やかに演じ分ける。「トワイライト」のイメージを変える、大人になったパティンソンの演技力の高さに圧倒された。

"半地下"を超えた"どん底"の使い捨てワーカーによる逆襲エンターテインメント。人間は何度も失敗し間違える愚かな存在だ。しかし、どの命にも等しく価値がある。稀代の映像作家ポン・ジュノが描く世界観の中で、愚かで愛すべき人間をパティンソンは見事に体現していた。

文＝中川菜都美