© STUDIO DRAGON CORPORATION
テソクを演じるイ・ソンミンの演技で注目したいのは、悲しみをただ涙で表現するのではなく、強がりや苛立ちの奥ににじませるところだ。病気を告げられたテソクが母親からの電話を受ける場面では、いつもと変わらず息子の健康を気遣う母親の言葉に、こみ上げる感情を抑えようとする。心配をかけたくないからこそ、素直に苦しさを打ち明けられない。その切なさが、言葉を詰まらせる姿から伝わってくる。
また、家族との夕食の約束に向かう途中、自分がどこにいるのか分からなくなり、記憶を取り戻そうともがく場面も印象的だ。仕事では相手の弱みを見抜き、状況を有利に動かしてきたテソクが、自分自身の記憶さえ思うようにならない。混乱と焦りをあらわにする姿は、敏腕弁護士という肩書の下に隠れていた1人の人間の弱さを浮かび上がらせる。
強気に振る舞う姿と、どうにもならない現実に打ちのめされる姿。その落差があるからこそ、テソクの苦悩は単なる悲劇にとどまらない。イ・ソンミンは、仕事上の冷徹さも、家族に対する不器用な思いも、1つの人格のなかに共存させている。病気になった途端に別人になるのではなく、それまでの生き方を引きずりながら変わっていく。その過程にこそ、彼の演技の見応えがある。
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そんなテソクと共に働く若手弁護士チョン・ジンを演じるのがジュノだ。勝訴のためなら強引な手段も辞さないテソクのやり方に反発し、当初は彼を軽蔑していたジン。しかし、仕事を通じてテソクの人間的な一面を知るにつれ、2人の関係は少しずつ変化していく。
ジュノの見どころは、単に正義感の強い若手弁護士を演じることではない。先輩のやり方に納得できず、遠慮なく意見をぶつける一方で、自分自身の仕事でも結果を出そうとする。初めて担当した裁判で勝訴し、テソクから仕事ぶりを認められる展開は、ジンが単なる後輩ではなく、弁護士として自分の力を示していく人物であることを印象づける。
そして、テソクの異変に気づいたとき、ジンは大きな衝撃を受けながらも、すぐに周囲へ知らせるのではなく、先輩を守ろうとする。反発していた相手の弱さを知り、仕事上の評価だけでは測れない人間性に向き合っていくのだ。ジュノは、テソクとの関係の変化を通じて、若さゆえの反発心と、相手を理解しようとする姿勢を併せ持つジンの成長を体現している。
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イ・ソンミンの感情を抑えた芝居と、ジュノが演じるジンのまっすぐな変化。その対比が、重いテーマを扱う本作に人間的な温かさをもたらしている。病によって記憶が失われていくなかで、逆に浮かび上がる家族への思い、人とのつながり、そして過去と向き合うことの意味。2人の俳優がそれぞれの持ち味を発揮する「記憶~愛する人へ~」は、事件の真相を追うサスペンスとともに、人生で本当に大切なものを静かに問いかける作品を、ぜひこの機会に確かめていただきたい。
文=HOMINIS編集部



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