良質なホームドラマを数多く輩出している韓国・KBSの週末ドラマ枠において、4月より放送を開始した最新ドラマ「ヒョンジェは美しい(原題)」。2021年の「KBS演技大賞」を受賞した前作「紳士とお嬢さん(原題)」の後を継いだ本作は、4月10日に韓国で放送された第4話が25.3%を記録するなど早くも高視聴率を叩き出している。
恋愛も結婚もしない3兄弟を取り巻く王道のホームドラマスタイルが好評で、中でも、生来の人懐っこい笑顔を見せているユン・シユンへの注目が高まっている。
デビュー作「明日に向かってハイキック」(2009年)での瑞々しい演技で脚光を浴びたシユンは、もともとホームドラマとの親和性が非常に高い。最高視聴率50%超えを記録した伝説のドラマであり、初主演を飾った彼の出世作「製パン王 キム・タック」(2010年)で見せた明るくへこたれないタックのキャラクターが視聴者に愛され、人気俳優へとステップアップした。
その一方で、軍隊の中で最も訓練が厳しいことで知られる海兵隊を2016年に除隊して以降は、"好青年"のイメージを打ち破る役柄にも積極的に挑戦してきた。「不滅の恋人」(2018年)や「緑豆の花」(2019年)といった時代劇では、過酷な運命に翻弄されるキャラクターを好演し、シリアスな演技で魅了。また、「トレイン」(2020年)ではエリートと汚職刑事という2つの人格を演じ分けるなど、これがユン・シユン?と驚くほどのギャップを見せてきた。
兵役を経て、幅広い役柄をこなす実力派へと脱皮したシユンだが、最新主演作である「ヒョンジェは美しい(原題)」は、まさに彼の原点回帰ともいえるホームドラマ。
祖父から"最初に結婚した者にマンションを渡す"と提案された独身の3兄弟が急に結婚を意識し始める...というラブコメ要素もあり、家族同士ならではのあけすけな会話もテンポよくコミカルに展開していく。
結婚を急ぐ必要はないと思っていた歯科医の長男ユンジェ(オ・ミンソク)と、公務員試験を準備中の三男スジェ(ソ・ボムジュン)。そして、その間に挟まれている36歳の次男坊が、シユン扮する離婚専門弁護士のヒョンジェだ。
頭がよく、運動もでき、そのうえ次男らしく調整能力にも長けた人気者。だがその一方で、昔から達弁で論理的、勝つためには詭弁も辞さない面も。そして、家族にはめっぽう弱い。気弱だがちょっと気難しいヒョンジュを、シユンが愛嬌たっぷりに演じている。
母親からの結婚に対する小言が日増しに強まっていく中で、女性に関心がなかったヒョンジェにも遂に恋のお相手が現れる。婚姻届を取り消す訴訟を依頼してきたVIP専門のデパート店員、ミレ(ペ・ダビン)だ。
依頼人には恋心を抱かないようにしてきたはずが、気がつけばミレを意識してしまっている――ヒョンジェのそんなリアルな感情の揺れ動きを、シユンが表情豊かに表現する。ヒョンジェに似合う色を探そうと、ミレが頬と頬がくっつきそうなほど顔を寄せて一緒に鏡を覗き込むシーンでは、ヒョンジェの瞬きの回数がどんどん増えるのがわかる。胸のドキドキがこちらまで伝わってくる印象的な1シーンだ。そのうえ元カノ・ヨンウンも登場し、複雑になっていくヒョンジェの恋模様から目が離せなくなっていく。
どこか少年っぽさの残る童顔が魅力のシユンも今年で36歳。「製パン王キム・タック」から12年を経て、大人の包容力や落ち着きを身につけた彼が見せる等身大のラブコメ演技も味わい深く、家族とは切り離せない"大人の結婚"というテーマにもしっくりハマっている。韓国の一般的な家庭事情も存分に盛り込まれたホームドラマで、シユンの最新形の魅力を改めて堪能したい。
文=酒寄美智子
放送情報
ヒョンジェは美しい(原題) 第1話先行放送
放送日時:2022年5月28日(土)18:30~
※レギュラー放送は6月18日(土)より毎週(土)(日)21:10~
チャンネル:KBS World
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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