『ダイ・ハード』や『プレデター』を監督!稀代のヒットメイカー、ジョン・マクティアナンを語る

宇宙からやって来た凶暴なハンターと米国特殊部隊との死闘を描く『プレデター』
宇宙からやって来た凶暴なハンターと米国特殊部隊との死闘を描く『プレデター』

(C) 1987 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

マクティアナン監督が、肉体派スターのシュワルツェネッガーを主演に擁したのが、『プレデター』(1987年)だ。これも『ダイ・ハード』同様、歴史に残るアクション映画で、私の子ども時代によくテレビで放映されていた。

エリート特殊部隊がジャングルでのミッション中、正体不明の地球外知的生命体「プレデター」に襲われる。物語自体はとてもシンプルだけど、何度観ても飽きずに最後まで観終わってしまう。

なんといっても見どころは、人型なのに気持ち悪いプレデターの造形、そしてプレデターが駆使する高度なテクノロジー兵器。敵を捕捉する時に体温を検知する主観映像は、もはや「プレデターの主観」といってよいほど有名だろう。

主演のシュワルツェネッガーは本作に先んじて、『ターミネーター』(1984年)、『コマンドー』(1985年)などで人気を確立していたが、本作では「これでもか」というくらいに台詞が少ない。敵との会話はないし、仲間もどんどん殺されていくので、台詞が少ないのは当たり前とはいえ、ひたすら行動で何が起きているかをおもしろく見せ切っていく。これは完全に監督の手腕だろう。

マクティアナンは『ダイ・ハード』やほかの作品でもそうだが、空間における人間の位置やサスペンス状況を切り取るのが非常に上手く、観客が絶対に混乱しないように設計している。これは彼がヒットメイカーである理由の一つだろう。丁寧だけど、くどくない。見落とされがちだけど実はすごい技術だ。

このほかにも、私が子どもの時に映画館で観てとても記憶に残っている『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)やショーン・コネリー主演作『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)、スティーヴ・マックィーンの『華麗なる賭け』(1968年)をリメイクした『トーマス・クラウン・アフェアー』(1999年)など、話題作をマクティアナンは連発していく。アクション演出の巧さ以外にも、映画監督としての個性を指摘するならば、『トーマス・クラウン・アフェアー』に代表されるようなウィットに富んだ会話も挙げられる。少しシニカルで、でも、やさしくて人をホッとさせる。そんな言葉たちがマクティアナンの映画に上品さを与えている。

若き大富豪という表の顔を持つ天才的美術品泥棒と、彼を追う保険会社の捜査員との攻防や大人のロマンスが展開される『トーマス・クラウン・アフェアー』
若き大富豪という表の顔を持つ天才的美術品泥棒と、彼を追う保険会社の捜査員との攻防や大人のロマンスが展開される『トーマス・クラウン・アフェアー』

(C)1999 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.. All Rights Reserved

少し前にFBIに虚偽の証言をして逮捕されたらしいが、個人的にはもっとマクティアナンの映画が観たい。ぜひ、大いなるカムバックをして新作を撮ってほしい。いつだってマクティアナンの映画は、私を童心に帰らせてくれるのだから。

文=入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)など。

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放送情報

プレデター
放送日時:2022年11月21日(月)15:45~

トーマス・クラウン・アフェアー
放送日時:2022年11月25日(金)6:00~
チャンネル:WOWOWプラス

ダイ・ハード
放送日時:2022年11月5日(土)16:00~、20日(日)8:00~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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