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『ユア・フォルマ』尾崎隆晴監督、作品に散りばめたこだわりの数々 キャスト陣とのやり取りも明かす

声優

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『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じたエチカ、小野賢章が演じたハロルド
『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じたエチカ、小野賢章が演じたハロルド

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――公式コメントで尾崎監督が話していた原作2巻から描くみたいなところも、そこに関係してくるんですね

「そうですね。原作の2巻以降の話には一連の繋がりがあって、特にブラックボックスやアミクス、ロボットの中にある未知の領域がテーマとして描かれています。このブラックボックスは、もしかしたら人間的な意思が生まれるかもしれないし、何を考えているのかわからない領域でもある。でも、これはアミクスだけに限ったことではなく、人間の中にもブラックボックスが存在するんじゃないかと思うんです。わからない部分をブラックボックスと定義するのであれば、人間なんてわからないことだらけですよね。だから、このテーマを掘り下げるなら、2巻の内容がちょうどそのブラックボックスの謎や、そこに関わるエチカとハロルドの結びつきとうまくリンクしてくるんです。さらに、<ペテルブルクの悪夢>というとある事件がその結びつきに関係していて、これをうまく繋げれば一つの流れとしてまとめられると考えました。一つのまとめ方としてはこれが自然な方法だと思っていましたし、筆安(一幸)さんにも最初にその提案をいただきました」

――今回アニメ化するにあたっての苦労はどんなものがありましたか?

「人間関係を描くといっても、最低限のSFの世界観やドラマの流れといった要素はしっかり用意しなければなりませんし、説明が必要な部分も多くありました。特に原作の膨大な情報量をどう削っていくかというところで、かなり苦労しましたね。というのも、原作のすべての要素には意味があって文字として描かれているので、それをどう取捨選択するかは本当に難しかったです。SF用語や細かいギミックの部分も、今回はいくつか外させてもらいました。まずは全体の情報量を整理してまとめるという作業が一番大変でしたね。一方で、ビジュアル表現に関しては、私たちは映像作りを仕事にしているので、むしろ楽しくて仕方がありませんでした。そこは苦労というよりも、楽しみながら取り組めた部分です。ただ、やはり原作を縮めるという意味では、楽しむというよりも苦労の方が大きかったかなと感じています」

――オリジナルの要素を加えること以上に、削っていくことのほうが大変なのでしょうか?

「原作者も、一文字一文字に思いを込めて書いているので、それを削るというのはきっと辛いことだと思うんです。だからこそ、その部分は丁寧に扱わなければいけない。なるべくセリフが長くなってしまう部分は、映像ならではの手法で説明するようにしました。文字だけだと伝わりにくい部分も、映像であれば一枚のシーンで表現できることも多いです。そうすることで、無理にセリフを詰め込むことなく、自然に物語を進められるよう工夫しました。映像ならではのアプローチを取り入れながら、原作の大切な部分を損なわないようにバランスを取りつつ進めていきましたね」

――筆安さんとはアニメ化するにあたってどう進めていきましたか?

「僕はSFを扱うのが初めてだったので、シナリオについては経験豊富な方にお願いするのが良いと考えて、まず筆安さんをお呼びしました。その中で、1巻からではなく2巻からまとめていくという方向性が決まり、筆安さんにシンプルな構成案をいただきました。そこからは現場スタッフに落とし込むための準備に入って、各所と協議しながらシナリオを進めていきましたね。もちろん、原作者の菊石(まれほ)さんにも参加していただき、ここは削ってはいけないという部分があれば、いつでも遠慮なくおっしゃってくださいという姿勢で進めました。とはいえ、菊石さんにはアニメはアニメでお任せいただいた部分が多く、比較的自由にやらせていただけました」

『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じるエチカ
『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じるエチカ

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――今回、エチカ役の花澤香菜さんについてはどんな印象を持たれましたか?

「元々、原作販促用のPVが存在していて、そのPVでお2人の声を聞いた瞬間から、『この2人はピッタリだな』と感じました。だからこそ、このままアニメ本編でも継続してやってもらうのがベストだと思っていました。実際に本編で演じてもらった際も、思っていた通り納得のいく仕上がりで。特に花澤さんについて言うと、エチカの内面的な性格を見事に表現してくれていて、感情の出し方や抑え方、そのボリューム感や温度感が非常によく伝わってきました。彼女自身が役作りをしっかり研究しているのがわかって、逆に驚かされた部分もありますね。『こんな内気な女の子の役を演じるんだ』と。特にエチカの不器用さを表現するシーンでは、そのぶっきらぼうな態度が逆に可愛らしく見えることがあって。人の不器用さが愛らしく映る瞬間ってあるじゃないですか。花澤さんはそういった部分をとても上手に表現していたと思います」

――アフレコでは、尾崎監督から花澤さんに向けて特にやり取りみたいなものはなかったんですか?

「特に大きなやり取りはなかったですね。ほとんどの部分は、キャストの皆さんが自分の中でしっかり昇華しきっていた感じがしました。プロの方に対して優秀というのも変な話ではあるんですけど、今回のキャスト陣は本当に優秀でした。それくらい皆さん役にハマっていたと思います。ルックスというのも一つの要素ではあるんですが、それ以上にそれぞれのキャラクターとの親和性が高かったと感じました。たとえばエチカも、一見暗そうに見えて実は可愛らしい一面があったり、清楚で真面目な子だったりするんですよね。そういったキャラクターの持つ内面と、キャストの素の姿がすごく近い印象を受けました」

――ハロルド役の小野(賢章)さんについてはいかがでしょうか?

「小野さんについては、多分皆さんもご存知かと思いますが、ファンの方なら特に、普段からあの優しい雰囲気や人当たりの良さがにじみ出ているのを感じているんじゃないでしょうか。それがもう否定のしようがないほど自然で、まさに小野さん=ハロルドと言えるくらいハマっていました。お芝居の面では、ハロルドを普通の人間と同じように演じてもらいましたが、激しい怒りや負の感情の表現だけは少し抑え気味にしてもらいました。それ以外は、小野さんの持つ明るさや優しさがそのまま役にフィットしていたので、特別な調整はほとんど必要ありませんでしたね。それぞれの役にベストな人たちが集まったなと感じています」

『ユア・フォルマ』小野賢章が演じるハロルド
『ユア・フォルマ』小野賢章が演じるハロルド

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

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作品情報

『ユア・フォルマ』
2025年4月2日(水)より、毎週水曜よる11:45~ テレビ朝日系“IMAnimation W”枠にて放送開始 ※一部地域を除く
地上波放送終了後、ABEMAにて先行配信開始
4月7日(月)より、毎週月曜深夜0時15分~各種配信サービスにて順次配信開始

詳しくは
こちら

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