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『ユア・フォルマ』尾崎隆晴監督、作品に散りばめたこだわりの数々 キャスト陣とのやり取りも明かす

声優

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『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――尾崎監督のお気に入りのシーンはありますか?

「実は真面目なテーマからちょっとした細かい部分まで、たくさんあります(笑)。まず、真面目なところで言うと、やはりエチカとハロルドがコードで繋がっている瞬間ですね。あの無言のシーンでも、強い説得力があって印象的です。ティザービジュアルでもその描写が象徴的に使われていますが、人間の関係性って、言葉だけでは表現しきれない信頼や絆のようなものがあるんだなと感じさせられます。2人が向き合う姿には、そういった無言の信頼関係がよく表れていて、これは自分だけじゃなく、多くの人が心惹かれる部分なんじゃないかなと思っています。こうした関係性をシリーズを通じて継続的に描いていくことで、最終的に2人の信頼関係がどこに向かうのかを視聴者の皆さんに見守っていただけたら嬉しいですね。それとは別に、大きなテーマ以外にも小さな楽しみがたくさんあります。たとえば、背景の広告看板や新聞記事の内容など、細かい部分にもこだわりました。1巻の内容を新聞記事の中にさりげなく入れていますし、エチカが不安なときに胸に手を当てるような小さな仕草など、細かい芝居も散りばめました。視聴者の皆さんがこうしたディテールを発見して楽しんでもらえるように工夫しているので、そういった細かい部分もこの作品の魅力の一つになっていると思います」

――すでに原作を読んでいても、楽しめる工夫が凝らされていると

「そうですね、この作品はすべてを知りたくなるような作りになっているんじゃないかな。『ここに何か意味があるのかな?』と思わせるような部分や、伏線なのか謎なのかわからないような要素が随所に散りばめられているので、一度見るだけではなく、何度も繰り返し見ることでより楽しめる作品になっていると思います。リピートして見るたびに新しい発見があるような構成にしているので、『あ、ここはこういう意味だったんだ』とか、『なるほど、こう繋がっていたんだ』といった気づきを、視聴者自身で感じ取ってもらえると嬉しいです」

『ユア・フォルマ』
『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――何度でも楽しみたくなる仕掛けというのは、尾崎監督がこれまで手がけた作品にも通ずるものなのでしょうか?

「意図的に演出の中にそういった要素を取り入れたりしています。さりげなく関係性を絵で表現したり、皮肉をカットに織り交ぜて話数に入れたりと、細かい工夫をしています。昔の芸術家が絵の中に謎を隠すように、自分も作品の中にそういう仕掛けを散りばめたいと思っているんです。極端な話ですが、いつか自分がいなくなっても作品だけが残ったときに、見た人が何か新しい発見をしてくれるような仕込みをしたいんです。でも、それを僕自身が説明しすぎると面白くないので、視聴者の皆さんに自分で発見してもらいたい。こうした意図的な演出は、自分の作風の一部でもあるかもしれませんね」

――今作もきっとファンの方がSNSで盛り上がるだろうなと思います

「そうなってくれたら嬉しいですね。そういう意味では作品というのは、私たちが作った時点で完成するものではなく、視聴者の皆さんが観て、自分なりに想像したり、何かを発見したり、解釈を加えた時に初めて完成するものだと思っています。自分の作品は、どちらかというと体験してもらうことを重視していて、その中で視聴者自身に判断してもらえると嬉しいなと、いつも思っています」

――それで言うと、ここ10年くらいで視聴者自身が解釈を自由に発信できるようになりましたね

「それはそれで、ちょっと面白い話というか、笑い話のような側面もあって。実は、制作上の単純なミスを視聴者に見つけられてしまうこともあるんです(笑)。でも最近は、チェック体制がしっかりしてきたので、そういうミスもだいぶ減ってきました。それでも、たまに意図的ではなく単純に間違えたものが混ざってしまうこともあるんですよ。でも、そういうミスさえも視聴者が勝手に解釈して想像を膨らませてくれるのは、人間のイマジネーションの可能性の大きさでもある。そこも含めて、自分は受け入れたいと思っています。『本当はそういう意図ではなかったけど、あなたがそう感じたならそれがすべてだよ』というくらいの幅の広さが、作品にあってもいいんじゃないかと思うんです」

『ユア・フォルマ』
『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――最後にこれから作品をご覧になる方に向けてメッセージをお願いします

「今の時代、SNSやリモートワークの普及によって、人間関係の距離感をどう保つべきかという問題が非常に複雑になっています。選択肢が多い分、どの方法が正しいのか判断するのが難しいですよね。SNSでは距離が近いように感じても、それが本当なのか嘘なのか分からなかったり、実際に会うことが良いのか悪いのかも状況によって異なります。会えないけれどリモートで繋がれるメリットもある一方で、それによるデメリットも存在する。お互いに良い面と悪い面がある中で、それをどう自分の中で判断し、昇華していくかが今の時代に問われていることだと思います。どちらが正しい、どちらが間違っているという単純な話ではなく、それぞれが自分にとっての正しい距離感やコミュニケーションの在り方を見つけていく必要があるんです。だからこそ、この作品を通じて、改めて人との距離感やコミュニケーションの大切さについて、何か一つでも感じ取ってもらえたら嬉しいです」

取材・文=川崎龍也

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作品情報

『ユア・フォルマ』
2025年4月2日(水)より、毎週水曜よる11:45~ テレビ朝日系“IMAnimation W”枠にて放送開始 ※一部地域を除く
地上波放送終了後、ABEMAにて先行配信開始
4月7日(月)より、毎週月曜深夜0時15分~各種配信サービスにて順次配信開始

詳しくは
こちら

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