劇場版『チェンソーマン レゼ篇』楠木ともりが語る、マキマ役を通じて見つめ直した表現の本質「ターニングポイントになったキャラクター」
声優

――支配的でありながら包容力もあるマキマは"掴みどころのなさ"が大きな魅力でもあり、難しさでもあると思います。そうした二面性を表現するうえで、楠木さんご自身が特に意識している声のトーンや間合いはありますか?
「マキマは本当に繊細なキャラクターで、例えるなら"針の穴に糸を通すような"細やかなニュアンスの調整が必要だと思っています。普通はキャラクターの気持ちを想像して、その内面を演技に乗せることが多いのですが、マキマの場合はあまり感情を乗せすぎないことも大事なんです。私が大切にしているのは"デンジから見えているマキマ"という視点。あくまで視聴者やデンジの目を通してマキマという人物がどう映るかというところに重きを置いています。気持ちをアウトプットしすぎないことで、"底知れなさ"や"多面性"が生まれればいいなと思っています」
――マキマを演じ続ける中で、その"掴みどころのなさ"や"多面性"とどう向き合っていくかというスタンスも、回を重ねるごとに変化していったのではないでしょうか。初期と現在で、演じ方やキャラクターへの距離感に変化があれば教えてください
「これまでの私は、役作りにおいてキャラクターの気持ちを細かく組み立てて、しっかりプランを持って収録に臨むことが多かったんです。ただ、マキマというキャラクターに出会ってから、"このキャラクターが作品全体でどう作用するのか"とか"物語の中でどんな役割を持つのか"といった全体の構造も考えるようになりました」
――なるほど。単に"キャラクターの気持ちを追いかける"だけでなく、物語の中でマキマという存在がどんな意味を持つのか、より大きな視点で役と向き合うようになったのですね
「ある種ターニングポイントになったキャラクターだと思っています。最近はプランを立てすぎず、現場で生まれる空気や、共演者の方とのやり取りの中から自然と生まれるものを大切にするスタイルに変化してきました。必要最低限のベースだけ用意して、あとは現場で楽しみながら演じる、という感じです」

――もともと『チェンソーマン』のファンだった楠木さんだからこそ、感じているマキマ像や"沼"のような魅力が、ご自身の中でもどんどん深化していっているのではないかなと思います
「演じる前からマキマのことは複雑なキャラクターだと思っていたのですが、実際に役として向き合う中で"好きだけど嫌い"みたいな感情がさらに強くなりました。人としては正直嫌いだな、と思う瞬間もあるけれど、その魅力や"沼"のような存在感には惹きつけられてしまいます。演じている時は、原作を読む時以上に、いろんな視点からキャラクターを見ることができて、自分でも新しい発見がありますね」
――それでは最後に、公開を心待ちにしているファンの皆さんへ、映画の見どころを教えてください
「この夏、劇場版で『レゼ篇』を観られることを私自身も本当に楽しみにしていますし、きっとファンの皆さんも同じ気持ちだと思います。最近は映画も配信などで気軽に観られる時代ですが、この映画は映画館の大きなスクリーンで観てこそ味わえる迫力や臨場感があります。原作ファンの方々も『劇場で観たい!』とおっしゃってくださることが多かったので、ぜひこの機会に映画館まで足を運んでいただき、全編を大画面で体験していただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!」

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
スタイリスト=森俊輔 ヘアメイク=大久保沙菜
公開情報
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
2025年9月19日(金)全国公開
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