声優・櫻井孝宏のキャリアをひもとくと、数々の人気キャラクターがずらりと並ぶ。「鬼滅の刃」の冨岡義勇役、「おそ松さん」の松野おそ松役、「ファイナルファンタジーVII」のクラウド役など、櫻井はさまざまなジャンルの作品で主要キャラクターを務めてきた。
櫻井の魅力の1つは、屈折した雰囲気を漂わせるニヒルなテイストだろう。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で演じたゆきあつ(松雪集)役や「化物語」の忍野メメ役がその一例で、櫻井の演じるキャラクターの声を聴くと、世間から目を背ける寂しさがありながら胸に秘めた信念がある、そんな二面性を感じさせられる。また、イケメンキャラを演じることも多い櫻井だが、毛色の違うところでは「しろくまカフェ」のシロクマくん役も担当。毛色が違うとはいえシロクマくんもまた、優しい顔で辛辣な言葉を口にする二面性の持ち主ではある。
ナショナル ジオグラフィックで6月17日(木)から2週にわたって放送されるドキュメンタリー番組「ホッキョクグマと白銀の世界」では、櫻井がナレーションを担当。カナダ北部のハドソン湾周辺に棲息するホッキョクグマの親子をカメラで捉え、厳しい気候変動に適応しながら生き抜くホッキョクグマの生態を追う。#1で紹介するのは、雪の中の巣穴で出産するホッキョクグマの母親と、生まれたばかりの子グマの生態。雪と氷に覆われた映像とともに、櫻井の静かな語り口のナレーションが北極圏の厳しい環境を描写していく。
内陸を目指して移動するホッキョクグマの親子には、さまざまな危機が待ち受けている。まだ固まりきっていない、海氷を踏破するシーンもその1つだ。穏やかな雪景色に見える表面とは裏腹に、海氷の下に広がるのは荒々しくも危険な氷点下の海。櫻井のナレーションは静かなトーンを保ちながらも緊迫感を漂わせ、海氷の下でうねる荒波を見るものに感じさせてくれる。
また、ホッキョクグマがカメラの前で見せる素顔も貴重な映像だ。母グマが子グマを慈しむ優しい眼差しや、アザラシの狩りに挑む生存本能など、追跡カメラの映像を積み重ねながら野生のホッキョクグマの生態が明らかとなる。櫻井によるナレーションも、クールな語り口の中に優しさやどう猛さといった二面性を織り交ぜながら、ホッキョクグマのさまざまな表情を描き出していく。北極圏に広がる雪景色の美しさと、その裏にある厳しさ。おとなしそうな風貌のホッキョクグマが内に秘めている野性の血。そんな二面性を持つ大自然の真の姿を味わえるはずだ。
文=editaholic
放送情報
ホッキョクグマと白銀の世界
放送日時:2021年6月17日(木)、24日(木)22:00~ほか
チャンネル:ナショナル ジオグラフィック
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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